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あんまり熱いので川辺で涼しんでいたら、やたら甲高いカエルの声が聞こえてきた。 「ケローっ! ケローっ!」 なんだか泣いているらしい、生えた草を踏みつぶしながらこっちに向かっていく。 よく見ると、その後ろから水色のゆっくりが追いかけていた。 「アタイったらゆっくりね!」 どう見てもゆっくりだね。 どうやらゆっくりカエルはあのゆっくりに追いかけられているらしい。 ゆっくりカエルはぴょんぴょん跳ねて逃げ回るが、水色のゆっくりは上下に動かず、そのまま平行に動いて追いかけてる。どうやって移動してるんだ、こいつ? 「アタイったらゆっくりね!」 「ケローっ!」 突然、水色のゆっくりが一回り大きく膨らむと。 口から冷気を吐いて逃げてたカエルを凍らせてしまった。 ……おぉっ、そんなこと出来るのか。 「やっぱりアタイったらゆっくりね!」 「……あ、あ~う~……」 体が冷凍されてカエルの動きが止まっている。水色のゆっくりはそのままカエルに近づいていって……。 あ、食べた。 「あぁあああぁぁあぁあぁあっ!」 「ガジガジ」 「やめっ……たずっ……」 カエルシャーベットはあっという間に水色のお腹に収まっていった。水色の大きさは大体30センチぐらい、カエルも同じぐらいだったんだが……スゲェ喰うな。 「アタイゆっくりだよっ! ゆっくりしてるよ!」 食べ終わると高らかに周りに宣言し始める水色ゆっくり。周りには誰もいないのに誰に言ってるんだ。 水色の体は宙に浮き、その辺を行ったり来たりしている。 こいつ、飛べるのか。 飛べるゆっくりなんて肉まんかあんまんぐらいかと思ったが、他にもいるんだな。 ……。 暴れ回っている水色を見て思う。 こいつがいたら、部屋も涼しくなるんじゃね? ……。 取りあえず話しかけてみた。 「ゆっくりしていってねっ!」 「ゆっ? アタイゆっくりだよっ!」 ……それが挨拶なのか? 「ああ、見てたよ。見事にゆっくりしていたな」 「そうだよ! アタイったらゆっくりだからねっ!」 おまえの言ってることはよくわからん。 「なるほど。でもやっぱりゆっくりなら、よりゆっくり出来る場所に行きたいものじゃないか?」 「ゆっ? アタイゆっくりしてるよ?」 「ここもゆっくり出来るけど、俺はもっとゆっくり出来る所を知っているんだ。興味ないか?」 俺の言葉に、水色は眉間に皺を寄せて考えている。よくわかってないらしい。 ……ゆっくりは馬鹿だ馬鹿だと思っていたが。 こいつは、輪をかけて馬鹿だな。 あまりに話が通じないので、掴んで持っていくことにした。 「ゆっ! アタイに何するのっ!」 「冷てっ!」 水色に触った瞬間、手に走る冷たさ。手がくっつくかと思った。こいつ氷で出来ているのか? 急に触れて機嫌を損ねたらしい。冷気を出した時のように顔が膨らんでいた。 「おじさんはゆっくりじゃないね! どっか行ってね!」 いつ俺がゆっくりだって言ったんだよっ! ……ちょっと腹立ってきたぞ。 「お前だって、ゆっくりじゃねぇよ」 その言葉は心外だったらしい。凄い形相でこちらを睨みつけてきた。 「アタイはゆっくりだよっ! ゆっくりしているよ!」 「どこがだよ! 全身氷のゆっくりなんて聞いたことねぇよ! あんこ吐けあんこっ!」 「ムッキーっ! ゆっくりったらゆっくりだよ!」 「だったら付いてきて証明してくれよ。お前がゆっくりだって」 「いいよ! ゆっくりしにいくよ!」 売り言葉に買い言葉。 気づいたら、水色が家へ来る流れになっていた。 俺にとっては願ったり叶ったり……なのか? なんだか間違えた気が……。 家に連れてきて3時間もすれば、自分がどれだけ間違えていたかがよくわかった。 畳の上を歩いたら畳が凍りつく、冷気を吐かせて涼しくしようと思ったら「アタイやすうりはしないよっ!」と言われる始末。それじゃ西瓜でも冷やすかと水色の上に置いたら凍りつき、後々「なにするのさっ!」と怒られる始末。 そして何よりも。 「アタイったらゆっくりねっ! アタイったらゆっくりねっ!」 意味もなく騒いでいるのが最高に鬱陶しかった。 こんなに使えないなんて……。 俺は頭を抱える。正直とっとと放り出したいところだが、体が冷たすぎて触れない。それじゃ勝手に帰るのを待とうと思ったら、どうも家が気に入ったらしく、まるで帰る気配がない。 他のゆっくりなら食べれば済む話だが、正直、30センチの氷を食べるなんて考えたくもなかった。 まさか力ずくで相手に出来ないゆっくりがこんなに扱いづらいなんて……どうしたものか。 ……ん? 「アタイったらゆっくりねっ!」 相変わらず叫ぶゆっくりは放っておいて、俺は思考を走らせ始めた。 そういえば……。 立ち上がり、押し入れを漁り始める。ここに確か……お、あった。 俺は鉄のかたまりを持ち上げると、水色の目の前に置いた。 「ゆっ?」 鉄のかたまりを指さして、水色に言う。 「ここに平べったくて乗れそうな所があるだろう」 「アタイゆっくりだよっ!」 ……まぁ理解したってことだろう。 「お前ここに乗れるか? 無理かなぁ、狭いかなぁ?」 「ゆっ! アタイゆっくりだもん! のれるよっ!」 案の定、挑発に乗って移動する水色。普通のゆっくりなら苦戦しそうだが、空を飛べる水色はあっさりと上に乗ってみせた。 「ほらねっ! アタイったらゆっくりでしょっ!」 「はいはい、そうだね」 乗るのはすげぇ速かったけどな。 俺は鉄のかたまりの頭についているレバーを回していく。 ほどなくして、水色が上から押さえつけられた。 「ゆっ!」 さてと。 用意しておいた器を下に置く。 「何するのおじさん、アタイゆっくりだよっ!」 はいはい。 横のレバーを回し、かき氷を作り始めた。 「あ、ああ゛あ゛あ゛ぁあ゛あ゛ぁっ!」 水色が回転し、器に削られた氷が乗せられていく。 「あ゛がががががっ!」 シャリシャリと音が鳴りながら、あっという間にかき氷が出来上がった。 「あっ……あっ……」 おおっ、普通に食えそうだな。えーと……。 出来上がったかき氷を手に俺はふと気づく。 そういえばシロップがなかった……。 俺はかき氷を一端置くと、そのまま外へと出る。 どうせその辺に……お、いたっ! 「みんなゆっくりしてねっ!」 「ゆっ!」 「うん、ゆっくりするよっ!」 そこにいたのは、ちょうど手のひらサイズの子供達3匹を遊ばせようとしていたゆっくりれいむの家族だった。 取り合えず親れいむを蹴り飛ばす。 「ゆ゛ぐっ!?」 変な叫び声を上げて飛んでいく親れいむ。こいつらってよく歪むから、あまり遠くまで飛ばないんだよなぁ。 「お、おかあさんっ!?」 「なにするのおじ──」 有無を言わせず、その場にいた子供れいむをかっさらっていく。 「うわあ゛あ゛ぁあ゛ぁぁっ!」 「なにずるのっ! ゆっぐりざぜでっ!」 「おがあざーんっ!」 子供の声に活性化されたのか、いきなり親れいむが起き上がってくた。元気だなこいつ。 「れいむのあがじゃんがえじでぇえぇぇぇっ!」 シュートッ! 「めぎゃっ!?」 ゴーーーールッ! 綺麗な放物線を描いて、親れいむが飛んでいく。……我ながら綺麗に飛んだな、体歪んでるのにぜんぜん減速してねぇや。 あ、誰かの家に飛び込んだ。 「いやぁあ゛ぁぁあ゛ぁあ゛ぁぁぁあ゛あ゛っ!」 「おがあ゛ざあぁぁあぁあぁぁんっ!」 邪魔者を排除して、俺は家へと戻ってきた。 「あっ! どこ行ってたの! アタイをむしするなんておじさんゆっくり──」 煩いのでレバーを回す。 「あぎゃぎゃぎゃぎゃっ!!」 水色を黙らせて、俺はかき氷を確認する。よかった、まだ溶けてないな。 「おじさん! 早くれいむたちをかえしてね!」 「おじさんとはゆっくりできないよっ!」 「ゆっくりしねっ!」 手に抱えていた子供れいむたちを、そのまま手のひらで丸めていく。 「うぎゃぁあ゛ぁぁあ゛っ!」 「うぷぷぷぴゅっぷぴゅぴゅぴゅぴゅぴゅっ!」 「やめでうぶあおじあぶげまぜうぎゃっ!!」 しっかり混ざったあんこを、そのままかき氷の上に乗せた。 氷宇治あずきの出来上がりと……。 一口食べてみる。 ……うーん。 普通の氷宇治あずきより喰いづらいが、そのまま氷を食べるよりマシか……なにより甘いしなっ! 「ここか」 「ここだよ! ここに入っていったよ!」 「これで嘘やったらタダじゃすまさへんど」 あん? 玄関の方で声がした瞬間、大きな音を立てて扉が開かれた。 「ゆっくりっ!」 なんだ、さっきの親れいむじゃないか。……あれ? 「ちょっと失礼しますよ」 親れいむの後ろには男が付いてきていた。何だ? 「なんか用ですか?」 「いや、さっきこのゆっくりが窓から飛び込んで来てな。ふざけるなと怒鳴ったら、吹き飛ばしたのは兄ちゃんやって言うんで話聞きにきたんや」 ガラ悪っ! つーかこのゆっくり、あれだけけっ飛ばしたのになんで生きてるんだよ……。 「そう言われても、俺今日ここから出てないですし……」 「なにいってるのさ、さっき──」 レバーを回す。 「あぎゃがぎゃがっ! も、もうやめでよ゛っ!」 余計なことを言うからだ。 「それにゆっくりをけっ飛ばすなんて誰だってやるでしょ、俺だっていう証拠がないじゃないですか」 「まぁそうなんやけどな……」 俺の言葉に面倒くさそうに頭を掻く男。どうも泣きつかせて儲けようという考えだったらしいが、引く様子がないので迷っている。 そもそもガラス代も、この親れいむを加工所に連れていけばちょっとは金になるし、大きな騒ぎにしたくないのが本音だろう。 「ゆっ! そんなことないよっ! れいむを蹴ったのはおじさんだよっ!」 ……煩いのがまだいたか。 「だから証拠がないだろう。何かあるのかよ」 「れいむの子供どこにやったのっ! あの子たちがいる筈だよ!」 「この部屋のどこに子ゆっくりがいるんだ?」 周りを見渡す男と親れいむ。もちろん子ゆっくりなんて影も形も見あたらない。あるのはかき氷に乗ったあんこだけだ。 「ゆっ! そ、そんなはずないよ! どこにいるのぉっ!」 呼び掛ければ返事をしてくれると、親れいむが叫び始める。 その間に、男と目があった。 「……」 手に持っていたかき氷を見せる。 「……」 男は頷くと、そのまま親れいむを片手で鷲づかみにした。どうやら伝わったらしい。 「ゆっ!? な、なにするのお兄さん!!」 「どうやら嘘だったみたいだな……」 その言葉に、親れいむは饅頭肌を青くして震えた。 ……どうやって色変えてるんだ、この不思議生物。 「ち、ちがうよ、れいむうそなんて」 「それじゃ約束通り、加工所いこか」 「いや゛ぁぁぁあ゛ぁぁあ゛あ゛ぁぁっ! かごうじょばい゛や゛だぁぁぁあ゛あ゛ぁっ!!」 暴れ回るが、ゆっくりが人の力に逆らえるわけがない。 食い込む親指の感覚に震えながら親れいむは連れて行かれる。 ……。 出て行く瞬間、俺は親れいむが見えるようにかき氷を食べ始めた。 「あ゛あ゛っ!!」 扉が閉められる。 親れいむの暴れている声が聞こえていくが、もう俺には関係ない。 ……やれやれ。 ため息をついてその場に座る。予想してなかった騒ぎに疲れがたまった。 ……。 俺は最後の光景を思い出し、思わず顔がにやけてしまう。 あの絶望で満ちた顔に、俺は溜飲が下がる思いだった。 さて。 業務用かき氷機の方を見る。 「おじさんゆっくりじゃないねっ! 早く外してねっ!」 さっきは喋らなかったので、ちょっとは学習したかと思いきや、時間が経つとまた水色は喚き始めた。 ……やっぱり、馬鹿だから数分で忘れたんだな。 それだけ忘れられたら、人だと幸せに生きられるんだろうが、水色が忘れても鬱陶しいだけだ。 しかし、どうするか。 全部削って食べるのは流石に辛い。 いっそ、削ってそのまま流しに捨てるか。 水色を処分する方法を考えながら、取りあえず腹が減ったので俺は洗い場の方へ向かう。 「ちょっとむししないでよっ! アタイはむしたべるんだからねっ!」 ……。 一瞬、無視なんて知っていたのかと思ったが、やっぱり馬鹿は馬鹿だった。 何かないかと食材を探し始める。 えーと、何か食えるものが……。 ……あ。 「だからむししないでっ! アタイたべちゃうよっ!」 ……うん、面白そうだな。 俺はその場から離れると、今度はかき氷機に近づいていった。 「ゆっ?」 「わかったわかった助けてやるよ」 頭についたレバーをゆるめ、水色を動けるようにする。 途端、水色は俊敏な動きで逃げ出していた。 「ゆっ! ようやくアタイがゆっくりだってわかったみたいね!」 だから、その速さのどこがゆっくりなのかと。 「でもおじさんはゆっくりじゃないねっ! アタイそろそろかえるよっ!」 「ああ、帰るのか?」 「ええ! ゆっくりじゃないおじさんはとっととれいとうはそんされてね!」 破損してどうする。 「残念だな。せっかくエサを用意してたんだが……」 言った瞬間、水色がこっちを見ていた。凄い食いつきだな……。 「エサっ? アタイしたにはうるさいよっ!」 「ああ、ゆっくりには美味しいって絶賛されているものがあってね。それなら満足できると思ったんだ」 ゆっくりに絶賛と聞いて興味が惹かれたらしい、さっきまでとは打って変わって瞳が輝いている。 「いいよっ! ゆっくりたべてあげるねっ!」 「そうかい、それじゃちょっと待ってな」 俺はまた洗い場へ引き返す。 水色に与える食材を手に取り、そのまま引き返してきた。 「それじゃ今から目の前に置くから、ちゃんと凍らせろよ」 「もちろんだよ! アタイに任せておいて!」 顔を張って自信満々に言う。 俺は手を開き、素早く食材を置いた。 水色の顔が膨らみ、瞬間冷凍しようと冷気を吐く。 しかし、食材が凍ることはなかった。 「ゆっ?」 「なんだ、凍らないみたいだな」 食材は水色よりも小さいながら同じゆっくりだ。しかしゆっくりカエルを食べていた水色には特に疑問はないらしい。特に気にせず、どうして凍らなかったのかを考えている。ああ、馬鹿でよかった。 「まぁいいじゃないか。そのまま食べてみたらどうだ?」 「もちろんアタイそのつもりだよっ! おじさんはだまってて!」 はいはい。 言われた通り黙っておくと、水色は躊躇せず大きく口を開けて、そのゆっくりを飲み込んだ。 「もぐもぐ」 「……」 「もぐもぐ……っ!?」 突然、口を開いたまま水色が痙攣し始めた。 「どうした? 美味しくないかっ?」 「ちがうよっ! アタイゆっくりだよっ!」 なんか慣れたな。 「お、おじさんっ!」 「なんだ?」 「あ、熱いよっ! すっごくあつじっ!?」 水色が最後までいい終わらないうちに、食べたゆっくりは水色の頭を通って中からはい出てきた。 「もこーっ!」 それは、ゆっくりもこうだった。 やっぱり、中で燃えると溶けるもんなんだな。 「あ、あああああああああっ!」 水色の痙攣は止まらない。もこうはそのまま水色の頭に乗って燃え続けている。 「もっこもこにしてやるよっ!」 「とける、アタイとけちゃうっ!」 もう頭の上部分は完全に溶けて、俺の家の床を水浸しにしていた。あとで掃除しないとな……。 「おじさんっ! 水っ! 水ちょうだいっ!」 「水ならそこの壺に入ってるぞ」 言い終わった途端、壺に向かって飛んでいく。 しばらくして、水色の大きな声が聞こえてきた。 「なかからっぽだよぉおおぉおおおぉおおぉっ!」 そりゃな。もったいないじゃないか、水が。 俺は両手でしっかり抱え、そのまま壺に向かっていく。 中を覗き込むと、もう半分近く溶けきった水色がそこにいた。 「お……おじさ……アタイ……」 「何だかさっきよりゆっくりしてるなっ!」 「……ち、ちが……」 「そんなお前にプレゼントだ。受け取ってくれっ!」 水色の上へ抱えていたものを落としていく。 抱えていたのは大量のゆっくりもこうだった。 「あ……」 「もこたんいんしたおっ!」 全員が一斉に炎を纏う。 「……あた……」 あっという間に、水色は溶けきって水に変わっていた。放っておけば蒸発し、跡形もなくなくなるだろう。 俺は安心と落胆でため息をついた。 やれやれ、もうちょっと使えると思ったんだがなぁ……。 もこうは一定時間炎を纏う。出せる時間に制限があるものの、物を燃やす時はかなり便利だ。 俺は使えるゆっくりはちゃんと使っていくが、使えないゆっくりほど邪魔なものはない。 いいゆっくりは、使えるゆっくりだけだ。 さて……。 改めて飯を食おうと、洗い場へ近づいていく。 「もこーっ」 そこに残っていたゆっくりもこうが、元気な声を上げていた。 End ゆっくりちるのをゆっくりもこたんで溶かしたかった。 すっきりー。 by 762 このSSに感想を付ける
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『ゆっくりの歌』 「ゆ~ゆゆゆ~ゆ~♪」 またやってやがる。 お店にも畑にもゆっくり対策がされている昨今、ゆっくり達は野生に生えた草木や小さな虫ぐらいしか食べる物がなくなった。 しかし中には人里に現れて人間に食料を貰おうとするゆっくりもいた。 町の中央通りに面する俺の家の前には何故かゆっくりが現れては下手な歌を歌っている。 ここ数日間はゆっくりれいむの家族が歌っていた。 どこで仕入れたのか「たべもの」「おかね」と書かれた箱をそばに置いている。歌に満足したら入れろというのか。 そんな歌で誰か満足するものか。通りすがる人々は皆不快そうな視線を向けて通り過ぎていく。 しかしゆっくり達はめげない。 「おかーしゃん、おうたうまいよ!」 「もっとうたってね!!」 「れいむもいっしょにうたうよ!!」 「「「「ゆゆゆ~♪ ゆゆゆゆ~♪」」」」 今度は子ゆっくり、赤ゆっくりを交えての大合唱だ。 聞くに堪えない。マジでやめてほしい。 お前たちが歌ってるのは俺の家の前なんだぞ! 成果がなければすぐにやめるだろうと一週間我慢したがもう限界だ。 「ゆゆゆ~、ゆっ? おにーさんたべものくれるの? おかねでもいいよ!」 「みんなのうたがうまかったからいっぱいくれるよね!!」 「おにーしゃんほめてほめて!!」 「ああ、いいだろう。俺の家に来なさい」 「ゆ! いいの!?」 「これでゆっきゅりできるよ!!」 「れいみゅたちのおうちができりゅよ!!」 何勝手なこと言ってるんだか。 まぁ、一般家屋にもゆっくり対策がされてるから人の家になんて入れたことないんだろうなぁ。 嬉しそうにニコニコするれいむ家族は開けた戸に向かって駆けっこだ。 だが、荒らすかもしれないお前たちを玄関より奥へは行かせねぇ。 「ゆっ? いきどまりだよ!!」 「おくにいけないよ! どういうこと!?」 すでに玄関には透明な箱をセットしておいたのさ。 ゆっくりが家に入ったときにはすでに箱の中。 俺は全てのゆっくりが箱に入ったことを確認すると入口を閉じた。 「とじこめないでね! ゆっくりだしてね!!」 「これじゃゆっきゅりできないよ!!」 「やめちぇよね!!」「おにーさんゆっくりださないとゆっくりさせてあげないよ!!」 「はいはい、奥へ行くぞ」 れいむ達の抗議なんて無視無視。奥の部屋へと連れていく。 その時いろいろと用意しておく。虐め道具とかいろいろ。 「おじさんもういいでしょ! はやくだしてよね!!」 「もしかしてばかなの? おじさんばかでしょ!!」 「ばーか! ばーか!」 いつの間にかおにいさんからおじさんに呼び方変わってるし。 ゆっくり脳のこいつらにはその程度の罵倒しか思いつかないんだろうなぁ。スイーツ(餡) 「上手い歌を唄えたらゆっくりさせてあげるよ」 「そんなのかんたんだよ! ゆっくりきいてね!!」 「みんなでうたおうね!」 「おじさんきっとこしをぬかすよ!!」 「い~いさ~、い~いさ~♪ ゆっくりでいいさ~♪」 「うん、下手。死んだ方がマシ」 なんだろう。何か分からないけど不快にさせる声とテンポで歌うやつらだ。 俺がれいむ達の歌を否定すると顔を真っ赤にして怒りだした。 「ゆ! なにいってるのおじさん!」 「れいむたちすっごいうまいでしょ!!」 「おんがくせいのちがいだね! おじさんゆっくりふるすぎだね!!」 「おじしゃんゆっきゅりおんちだね!!」 「何でもいいけどさ。俺を満足させる歌を出さない限りずっとそこにいることになるぞ?」 その言葉に自分たちの置かれた状況をようやく理解したらしい。 母れいむなんかは冷汗を垂らしてやがる。 「ゆ! ならおじさんれべるでゆっくりうたうよ!」 「れいむのびせいにききほれてね!」 「ゆゆ~♪ ゆ~♪ かわのながれのゆ~っくり~♪」 今度は人間様の曲をレイプかよ。 それにしても元ネタを知ってるのかこのゆっくりは。 まぁ、どっちにせよ下手だな。でもこいつらが歌えるのはこれで最後かもしれないしもう少し歌わせてやるか。 「ゆゆゆ~♪ ゆゆ~♪」 「ゆゆゆゆゆゆゆゆ~~♪」 三秒で前言撤回。下手なくせに下手な裏声使うな。 「もうやめろ! お前たちを俺がプロデュースしてやるよ!」 「ゆぎゅっ!?」 俺は箱の上蓋を開けて赤ちゃんれいむを片手で一匹ずつ掴んで取り出す。 割と握力かけてるので赤ちゃんれいむは苦しそうだ。 「なにするの! はやくあかちゃんをはなしてね!!」 「そうだよ! いもうとをゆっくりはなしてね!!」 「ゆっくりできないからやめてね!!」 「良い声出せよぉ?」 そう言って赤ちゃんれいむ達を緩やかに握りつぶす。 「ゆぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ!!?」 「ぎゅるじぃぃぃ!! はな"じでぇぇぇ!!!」 顔を真っ赤にして苦しむ赤ちゃんれいむはさっきの歌よりもずっといい声を出してくれた。 そうそう。ゆっくりの歌と言えばこれが一番だろ。 クラウザーさんがデスメタルを歌えば伝説になるように、ゆっくりが悲鳴を上げればこんなに良い曲になる。 嗚呼、最初からこうやって歌ってくれれば許したかもしれないのに。 「やめでね! あかちゃんぐるじぞうだよ! はなじでぇぇぇ!!!」 「ゆぅぅぅぅ! ゆっぐりできないよぉぉぉ!!」 「はなじであげでよぉぉぉ!!!」 涙を流して赤ちゃんを放してと頼みこんでくる。 こいつらの必死な声もいいハーモニーを奏でてくれるじゃないか。 「何故? 良い歌を歌ってるじゃないか」 「ぎゅぅぅぅうぇぇ!!!」「ゆっぐりでぎな"、い"ぃ"ぃ"ぃ"」 赤ちゃんれいむはその言葉を最後に潰れて静かになった。 もう終わりか。ま、お望みどおりゆっくりできたから良かったじゃないか。 「ゆぅぁぁぁぁぁああ!! なんでごろじだのぉぉぉぉぉお!!!!!」 「おじさんはゆっぐりじねぇぇぇ!!!」 「れいむのいもーどがぁぁぁ!!!」 泣き叫ぶれいむ達三匹だが、構わず子れいむを一匹取り出す。 片手では掴めないので一匹ずつ歌わせてやるとしよう。 「こんどはなにずるのぉぉ!! これいじょうこどもをいじめないでぇぇぇぇ!!!」 「今度はこれだよ」 どこからともなく取り出した釘を子れいむの右目に刺す。 「ゆぎぃぃ!! いだいよ! れいむのめがあぁぁぁぁ!!!」 「ああああ!! なんでごどずるの!!」 「やめでぇぇぇ!!!」 次は左目だ。その次は右頬、またその次は左頬。 両耳穴、足、額、脳天、リボンの結び目と体中に釘を刺し込んでいく。 「ゆぎゃっ、ゆぎぃぃぇぇぇぇぇえ!! ゆびっ!?」 今度は舌を貫いてやった。 全身釘だらけになる子れいむ。今素手で握りつぶそうとしたら主に俺の手がやばい。それぐらい釘を刺し込んでいた。 特に足の部分には重点的に刺してやった。 「やめでね! ぬいであげでよぉぉ!!!」 「みでるごっちもいだいよぉぉぉぉ!! やめでぇぇぇ!!」 「じゃあ抜いてあげるね」 「ゆっ! はやくぬいでね!!」 俺は母れいむの望みどおり子れいむの釘を抜いていく。 抜くとそこから餡子が漏れ出していく。 十本抜いた時点で体中から餡子が洩れていた。 「だ、だめだよ!! あんこがでてるよ!! やめでぇぇぇ!!!」 「えー? 抜いてほしいんでしょ?」 言いながら今度は足の部分の釘を一気に全部抜いてやった。 抜くと同時に重力にまかせて餡子が床へとぶちまけられていく。 「ゆぎぁぁぁぁぁ!!! れいむのあんこがぁぁぁぁ!!! おかーざんだずげでぇぇぇ!!!」 「あああああ!!! これいむぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「やぁぁぁぁぁぁ!!!」 素晴らしい声だ。高音が綺麗に出せてるじゃないか。 あぁ、もっと聞いていたいが餡子が尽きた子れいむから声が出なくなってしまった。 次の子れいむて続きを奏でなければ。 次の子れいむを箱から取り出してすぐさま金槌で叩く。 「ゆべぇ!? ぎゃめでぇぇ!!」 「もうやめでぇえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」 今が盛り上がりどころなんだ。一息でもつかせてたまるものか。 なるべく一度に潰れないように力を加減しながら叩く。餡子が少し漏れるぐらいなら構わない。さらに叩く。 「ゆぎぃ?! ひでぶっ! や、やめで!? いだっい! だたがっ、ないでぇっ!!」 「あっはっは、いいリズムで歌うじゃないか。もっとだ。もっと歌えよれいむ!!」 ノってきたぞ。もっと殴ってやる。 潰れないように潰れないように…潰れないようにぃ! 「ゆぶげぇぇぇっ!!?」 「れいぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」 あ、いっけね。勢いあまって潰しちゃった。 餡子が子れいむから大量に流れ出てる。これは死んだな。 「あああああ!!! みんなじんじゃったぁぁぁぁ!!! おじさんはじねぇぇぇ!!!」 「いやぁ、でもいい歌だったじゃないか」 「なにをいっでるの!? くるじぞうなごえだったよ!!!」 「えー、君にはこの良さが分からないのかぁ。音楽性の違いかな」 「じねぇ! ごのゆっぐりごろじ!! ゆっぐりじないでいまずぐじねぇぇぇ!!!」 「まったく。君には良さが分かるよう教育しないといけないな」 そう言ってヘッドホンを母れいむに取り付けた。 ゆっくり用の特製ヘッドホンで、万力のように締めつけて取り付けるのでゆっくりには決して取れない仕様だ。 「ゆっ!? なにもぎごえないよ!!」 遮音性の高いやつだからな。 でも大丈夫。すぐに音楽をかけてあげるよ。 俺収録の『ゆっくりの歌』だ。 音楽を再生すると母れいむはすぐに顔を青ざめた。 すでにこの世にはいないゆっくり達の悲鳴が延々と聞こえることだろう。 『ゆげぇぇぇ、まりざはわるぐないんだぜ! やめぎゅぇぇ!!?』 『ちちちちんぽー!? いたちんぽー!!』 『おかーしゃんだしゅげでぇぇ!!! あちゅいょぉぉぉぉぉ!!!!』 『わがらないよぉぉぉ!! しっぽをだべないでぇぇぇぇぇ!!!』 「やめでぇぇ!! こんなのききたぐないよぉぉぉぉ!!!」 「何、すぐに良い曲だって思えるようになるさ。 そうだ。後でさっき録っておいた君の子供の歌を聞かせてやるよ」 「おじさんなにいっでるのがぎごえないよぉぉぉ!!! ひめいじがきごえないぃぃぃ!!!」 数日後、精神に異常をきたして外部からの刺激に対して何も反応しなくなったれいむが出来上がった。 食事は口元に持ってけばもしゃもしゃと咀嚼する。 ただそこに在って生きているだけの物だ。 つまらん。結局こいつもゆっくりの歌の良さが分からなかったか。 こいつはもういらない。明日の朝には生ゴミと一緒に捨てておこう。 終 by ゆっくりしたい人 短めのを書こうと思った結果がこれです。 考えながら文を書いたので最初と最後で矛盾が生じてるかも。ゆっくりゆるしてね! このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/806.html
うーぱっくが目の敵にされる理由の一つに「(ゆっくりにしては)高いところを飛行するので駆除しにくい」というものがある。 飛行するタイプのゆっくりとしては他に捕食種のゆっくりゃやゆふらん、それにきめぇ丸などが挙げられる。 しかしこれらのゆっくりは飛行しても高度が知れてるので対処しやすかったり(れみりゃやふらんは野菜が嫌いなのか畑に近づきもしない上に 捕食種とあって農家に意外と人気があったりする)、そもそも人間に友好的であったりする為に嫌われはしても積極的に駆除されはしていない。 ところがうーぱっくの奴はゆっくりの畑荒らしに関与している上、 駆除されそうになると小賢しくも上空へ逃げるというのでは農家の人々に嫌われるのも無理はない。 幻想郷の一般人にとって手を出しづらいうーぱっくの駆除を殆ど加工所が行うようになったのは以上のような経緯があった。 20年程前、幻想入りしてきた『それ』は加工所の東に人為的に作られた平地の上で鎮座していた。 本来ならば幾つかの数を確保し、チームとすべき『それ』であったが加工所の豊富な資金力・河童の狂気じみた技術力を持ってしても なお扱いにくいモノだった為に現状では一つしか存在していなかった。 たった一つしかない『それ』の周りには人妖がせわしなく動き回り、『それ』に手を加え様子を見会話を交わしていた。 しばし時が経ち、『それ』の周囲の人妖が一人、また一人と離れていく。 『それ』を用いたうーぱっく駆除が実施されるのだ。 『それ』の周囲に残る人影が二つにまで減ったところで状況は次の段階へと進む。 一人が『それ』の先端部分に梯子を使って上り、彼へと黄色のジャケットを着たもう一人が近づいていく。 上ったほうがボタンを押すと『それ』は音を立てながら細かく振動を始めた。 地面に残ったほうの河童の男が『それ』に開いた二つの穴の前に人影が無いか確認し、上ったほうの人間に合図を行う。 それに返礼を行なった彼は次に『それ』から離れるよう河童の男に合図を出し、その意図が実行されたことを確認した後に幾つか操作を行なった。 『それ』は彼の操作に答えるように甲高い音を上げつつ振動を激しくする。 上に乗っている彼はさらに手を動かし、『それ』に付いている何枚かの板の動きを河童の男に確認させた。 問題ないことを確認した彼は透明な材質でできたドーム状の物体を閉じ、その中に入る。 さらに両手の親指で河童の男に指示を出す。 それを見た河童の男は『それ』を支える棒の横から目立つ色の直方体を取り出し、上の男に見せ続いて親指を立てる。 上の男は河童の手を確認し、操作を行なう。 『それ』は滑るようにゆっくりと動き始め、平原を渡って盛り土の壁で三方を囲まれたスペースへと移動した。 先ほどの河童の男とは別の赤いジャケットの人物が『それ』へと近づく。 さらに『それ』に装着された二種類の棒を確認し、そこから何か細い物を抜き出した。 赤いジャケットの男が掲げるその細い物体を確認した上の男は再び操作を行い『それ』を移動させる。 最終的に『それ』は細長い平地の一端へと到達した。 『それ』上の男が電波通信によって発言する。 「離陸許可を求める。」 「離陸を許可。幸運を。」 男の要求に対して電波で管制の返事が寄越される。 それを聞いた彼はフルブレーキ。機体を地面へと固定する。 続いて左手でスロットルをミリタリーへ。 クリモフ RD-33K ターボファンが轟音とともに大量のガスを後方へと噴出を開始する。 ブレーキリリースとほぼ同時にアフターバーナーオン。 ファルクラムは爆音と炎を滑走路に撒き散らしながら高速で離陸。 「パティシエ・コントロール、こちらキヨス。離陸した。」 「キヨス、キヨス。こちらパティシエC。針路…ええと…西だ。西へ向かえ。」 「キヨス了解。」 管制の指示は不明瞭な物だった。 仕方ない。むしろ幻想入りした経験者を素人の集まりが四方八方からかき集めた現状でここまでやれている方が奇跡に近い。 そう思いながら彼は操縦桿を傾け、愛機を西へと向けた。 彼は緑海の上を飛んでいた。 かつて幻想郷の外の世界に存在していた赤い日本を故郷とするMiG-29Jにとって 散策に近いレベルまで速度を落としていたがそれには幾つかの理由がある。 一つはターゲットのうーぱっくは音速で逃走などしないこと。 もう一つは超音速で上空を飛んだ挙句、衝撃波で森を吹き飛ばしたりなどすればまず確実に森の住人から報復を食らう恐れがあった事。 轟音を撒き散らしての飛行の許可ですらかなりの苦労があったというから当然だろう。 ともかく、彼が遊覧飛行気分で飛ぶこと暫し、会話上の存在であった目標が視認できる距離に近づいた。 「パティシエC、こちらキヨス。目標を視認した。」 「パティシエC了解。接近して確認せよ。」 「キヨス了解。接近する。」 管制塔の新たな指令に従い彼は白フチの赤い星─日本民主主義人民共和国の国籍標識が未だに残されている愛機の翼をめぐらせ目標へと進路を変えた。 機体が傾斜し、ゆっくりまりさに稲妻が突き刺さっている様子を図案化した垂直尾翼の部隊マークが陽の光を受けてきらめく。 彼はスロットルを慎重に絞り、最低限飛行できるレベルまで速度を落とした。 うーぱっくに乗って意気揚々と「おうち」に向かっていたゆっくり達はこの段階でようやく接近する物体に気がついた。 沢山の食べ物が置いてある場所を独り占めする人間が設置した柵をうーぱっくと協力して乗り越えた事に酔いしれ、 自分たちがいかにゆっくりできるかを今の今まで仲間たちと語り合ってい為に、MiGが視界一杯に大きくなるほど接近するまで気づけなかったのだ。 初めて目にする物体にゆっくりたちは興味津々といった態度で注目し、好き勝手な想像をめぐらせた。 「あれってなんだろうね!」 「ゆっくりできるかな?」 「きっとうーぱっくのおともだちだよ!おそらをとんでるもん!」 「うー♪うー♪」 「それならゆっくりできるね!」 「でもちょっとうるさいね!」 「しずかにしてもらおうね!」 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 ターボ・ファンが至近距離で轟音を撒き散らしている為に別のうーぱっくに乗る仲間とは会話できなかったが、 同じうーぱっくに乗っている仲間と会話をするゆっくり。 続いておなじみの挨拶を飛行物体へと放ったが、当然返ってくるのはタービンブレードが発生させる大気の振動だけだった。 「パティシエC、こちらキヨス。目標うーぱっくは標準サイズが4に大きめのが3だ。」 「パティシエC了解。キヨス、積載物を報告せよ。」 「キヨス了解した。 … 標準サイズは全て食料を搭載している模様。食料は根菜だ。」 「標準サイズは根菜が殆どだな。パティシエC了解。キヨス、続いて報告せよ。」 「大きめのうーぱっくには1つあたり通常ゆっくりが3体搭乗している。指示を請う。」 「パティシエC了解。キヨス、目標を着地させろ。」 「キヨス了解。警告を行う。」 雁行隊形で飛行中のうーぱっくに接近し、管制と幾つかやり取りを行った彼は警告を行う為に増設された外部スピーカに通じるマイクのスイッチを入れた。 『こちらは加工所だ。飛行中のゆっくりに告ぐ。君達がうーぱっくに乗せている野菜は畑から盗んだ物だ。直ちにこちらの指示に従い着陸せよ。 繰り返す。直ちにこちらの指示に従い着陸せよ。』 エンジンの轟音に負けない音量で機外へ発せられた声は当然ゆっくり達にも聞こえた。 だが、ゆっくりはどれ一つとしてその言葉に従う意思など生まれなかった。 「ゆー、なにいってるの!」 「なんでいうことをきかなきゃいけないの?」 「これはれいむたちがみつけたんだよ!」 「すこしぐらいならわけてあげられるよ!ひとりじめなんてしちゃだめだよ!」 「「ゆっくりがまんしてね!」」 MiGに向かって身を乗り出してぎゃあぎゃあと騒ぐゆっくりたち。 大量に食料を確保して気が大きくなっている為なので当然だろう。 「パティシエC。こちらキヨス。目標は警告に従わず。」 「パティシエC了解。警告射撃を実施せよ。」 「キヨス了解した。警告射撃を実施する。」 RD-33Kが僅かに唸り声を大きくし、ファルクラムはうーぱっくの集団の前に躍り出る。 「いっしょにくるのかな!?」 「おうちでいっしょにゆっくりしようね!」 「やっぱりうーぱっくのおともだちなんだ!」 意図を勘違いしたゆっくり達は歓迎の声を上げる。 しかし、次に発生した別の轟音によってその声はかき消された。 ファルクラムは30ミリ機関砲を連射。 火薬の炸裂音が連続するとともに砲弾が光を曳き音速で飛翔。 あまりにも突然の出来事であるためゆっくりは口を明けて目をむき出しそうなほど見開いて驚いたが、危害が無いことが分かると怒りの声を上げだした。 「もー!びっくりさせないでね!」 「なにいってるかわからないよ!」 「ゆっくりしずかにしゃべってね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 警告射撃も意味を成さなかった。 当然であろう。警告射撃が成立するような生物ならそもそも畑荒らしなどしない。 「パティシエC。こちらキヨス。目標は依然として飛行中、こちらに従う意思は無いと思われる。」 「キヨス、パティシエC了解。目標の後方に移動、待機せよ。」 「キヨス了解した。目標後方に移動する。」 彼は操縦桿を右に倒し愛機を傾ける。続いて右手を引いて上昇。 ファルクラムは右へシャンデル、進路を反転させうーぱっくの後ろへと飛び去る。 ターボ・ファンの轟音が消え去り、ゆっくり達にしばしの平穏が訪れる。 「ゆっくりいっちゃったね!」 「もっとゆっくりしていけばいいのに!」 「またゆっくりしたいね!」 視界からファルクラムはあっという間に消え去り、別れを惜しむ饅頭たち。 豊原郊外で生産された電子装備が放つ電磁波を照射されていることにはもちろん気づいていない。 「パティシエC、こちらキヨス。目標の後ろについた。」 「パティシエC了解。キヨス、攻撃せよ。」 「キヨス了解した。攻撃する。」 彼はレーダースコープに取り付けられたセレクタを操作し、スコープ上で三角形に並んだ光点のうち右から二番目をロックオン。 交点がロックオン・シンボルで囲まれた。操縦桿の発射ボタンを押す。 翼からセミ・アクティヴ・レーダー誘導ミサイルが分離。 ロケットモーターに点火し猛烈な加速で10キロメートル彼方の目標へと突進。。 ミサイルはマッハ3で飛翔。目標まで15秒。 それが近づくことに最初に気づいたのは一番前を飛んでいるうーぱっくに乗ったゆっくりまりさだった。 捕食種やもっとおそろしい人妖が近づいてこないか常に辺りを見回して警戒していたのが功を奏した。 彼女は盛大に煙を上げながら近づく棒を見て仲間に注意を促す。 「みんな!なにかとんでくるよ!きをつけてね!」 ゆっくりの群れでそれなりに信用が置かれている個体が大声を上げるのに気づいた、 他のまりさやれいむが彼女のほうを向き、次いで警報が発された物体のほうを向く。 「まりさ!なんだろうねあれ!」 「ゆっくりできるといいね!」 「みんなであいさつすればきっとゆっくりしてくれるよ!」 「ゆっくりあいさつしようね!」 「「うー!?うー!?」」 後ろが見えないうーぱっくが不安そうな声を上げるが、搭乗中のゆっくりはそんなことに構わず勝手な未来を想像する。 R-27Rの改良型である八九式AAM<斬撃>はその間に飛翔。 まりさの目の前でミサイルはうーぱっくに接近、レーダー反射波で目標が近い事を感知した信管が作動、 破片を撒き散らし両隣を飛んでいたうーぱっくと一緒にズタズタに切り裂いた。 「ゆー?ゆっ!?ゆっ!!?」 餡子脳の理解の範疇を超えた事態にまりさの思考は追いつかない。 飛んできた破片が刺さっていることに気づき、痛みを感じた段階でようやく事態を把握した。 「ゆ゛ううぅぅーーーーっ!!!い゛た゛い゛よ゛ぉーー!!」 「おち゛ないて゛ね!おち゛ないて゛ね!ゆっく゛りし゛て゛いって゛よぉー!!」 「ゆっく゛りと゛は゛ないと゛し゛んし゛ゃうよおぉー!ゆっく゛り゛と゛んて゛ね゛ええぇー!!」 饅頭の耳障りな悲鳴が上がる。 かつて仲間だった段ボールと餡子の混合物が落下していき、水っぽい音を立てて地面に激突、 3回ほど何か赤黒い粒を撒き散らしながらバウンドして停止したところで悲鳴は一層拡大した。 右端を飛んでいたうーぱっくは体の半分を運んでいた食料ごと吹き飛ばされ、 もう半分を穴だらけにされながらも本能で飛行を維持しようとしていたが高度が下がって木に激突、うめいて絶命した。 右から三番目、まりさに近いうーぱっくはもっと悲惨だった。 爆発の衝撃によりきりもみで左から三番目のうーぱっくに突進、もつれ合い食料をバラ撒きながら進路を斜め下に変更。 当然ながら地面と熱い抱擁を交わし、砕け散った。 7体いたうーぱっくはあっというまに半分以下に減ってしまった。 「うー!うーっ!」 「うーうー!」 残ったうーぱっくはこのまま固まっていると一網打尽だと本能で感じ取りそれぞれが別の方向を目指した。 ゆっくりとしては天才的ともいえる判断だったが残念なことにファルクラムの前では何の効果も無かった。 「パティシエC、こちらキヨス。目標を4つ撃墜。残りは散開。」 「パティシエC了解。キヨス、残りも撃墜せよ。」 IRSTが中央のうーぱっくを探知。先ほどまで左から二番目だった個体だ。 レーザー測距装置を作動。ロックオン。 ミサイルのシーカーが目標を捕らえたことを知らせるトーンが聞こえる。直ちに発射。 白煙を曳きながら九〇式AAM<突撃>はまっしぐらに進む。 「またなにかきたよ!はやくにげてね!」 「こっち゛こ゛ないて゛えええぇえ!」 身を乗り出して後方を覗き込んでいたゆっくりの悲鳴のような通報で狙われていることを知ったうーぱっくは高度を下げながら右旋回。 重力の助けで加速して逃れようとする。 しかし、うーぱっく必死の機動は超音速で飛行するAMRAAMすら撃墜する<突撃>にとっては停止しているような物だった。 ゆっくりれいむが一体、うーぱっくの動きにより振り落とされた次の瞬間、R-73の改良型であるミサイルが起爆した。 息を吸い込んで膨らもうとしていたゆっくりれいむは超音速の壁に叩きつけられ、体中に開いた穴から空気を噴出しながら近くの木へと吹き飛ばされた。 れいむはたまたまこちらを向いていた木の枝に真正面から突進して突き刺さり、セルフ百舌の早贄ごっこをおこなって一生を終えた。 全速力で逃走中のうーぱっくの中でまりさは再び恐ろしい光景を目にした。 バラバラに逃げればそう簡単には追いつかれないだろうと思っていたのに、実際はあっさり追いつかれていた。 まりさの視界で二度、爆発が起こり通常うーぱっくと大うーぱっくがグチャグチャの何だったか良く分からない物体になって落ちていった。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「まりさどうしたの?ゆっくりおしえてね!」 「ゆっくりちゃんとせつめいしてね!」 前を向いているために今の惨劇に気づいていないれいむとありすがまりさに説明を求める。 だが、今まで「ゆっくりプレイス」だと思っていたうーぱっくの中が最早そうではないことをこれでもかと見せ付けられたまりさは ショックで叫び声をあげるだけの饅頭と化していた。 れいむとありすが後ろを覗き込もうとしてもみ合ってるうーぱっくの様子に構わず、ファルクラムは接近。 狙いをつけると同時に彼は機関砲発射トリガを引いた。 轟音を上げてGSh-301が30ミリ砲弾を吐き出す。 中に乗っていたゆっくりは1発目が貫通した時点で衝撃で圧死した。 30ミリ砲弾が着弾するたびにうーぱっくは千切れ、弾け飛ぶ。 端からはひどく混沌としたダンスを踊っているようにも見える。 最後のうーぱっくを撃破したと判断した彼がファルクラムを加工所へと向け、飛び去った後に残されていたのは空中を舞い降りる段ボールの破片のみだった。 どう見てもゆっくり虐待よりもMiGを書くのがメインになってます。本当に(ry by sdkfz251 このSSに感想を付ける
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※普通のゆっくりでないゆっくりが出てきます ※普通のゆっくりがいじめられます ※お兄さん分や人間分はありません ※おうち宣言があります ゆっくり勝負 「「ゆっくりしていってね!」」 とある巣穴の前。一組のゆっくりが穴に向かって声を上げる。 ゆっくりれいむとゆっくりまりさだ。 「「ゆゆ、ゆっくりしていってね!」」 中からも声がして、こちらもまた一組のゆっくりが出てくる。 外から来たゆっくりと同じれいむとまりさだ。 「「きょうからここはれいむとまりさのおうちにするよ!」」 定番のおうち宣言をする外のゆっくり。 「「なにいってるの?ここはれいむとまりさのおうちだよ!」」 それに反論する巣のゆっくり。 お互いに自分の主張を繰り返すが中々勝負が付かない。 「そうだ!ゆっくりしょうぶでどっちのすかきめるよ!」 ふと、外のれいむが提案した。 「ゆっくりしょうぶ?」 「どっちがゆっくりしてるかくらべるんだよ」 「どうやるの?」 「まりさとまりさ、れいむとれいむがおたがいにゆっくりしているかみるんだよ」 互いに向かい合った状態になり、どれだけ長くゆっくりしていられるか競うという事らしい。 ゆっくりできないと言う=ギブアップらしい。 「ゆゆーん、それなららくしょうだよ、まりさとれいむいじょうにゆっくりしたゆっくりはいないんだよ!」 「このしょうぶ、れいむたちのかちだね!」 余裕綽々な顔をする内ゆっくり。 元からそんな顔をしているという突っ込みは敢えてスルーしておく。 そんなこんなでゆっくり勝負がスタートした。 以下、巣のゆっくりを内れいむ・内まりさと 外から来たゆっくりを外れいむ・外まりさと呼ぶことにする。 開始10分 「ゆっくりしてるね!」 「まりさもゆっくりしてるね!」 思う存分ゆっくりする内まりさと内れいむ。 「ゆっくりぽかぽかだね!」 「ゆっくりきもちいいね!」 対する外れいむと外まりさも非常にゆっくりしている。 しかしまだ勝負は始まったばかりなのだ。 1時間後 「ゆっくりできてるね!」 「これなられいむたちのかちだね!」 すっかり勝利を確信している内れいむ、内まりさ。 「かぜがきもちいいね!」 「ゆっくりできるね!」 内ゆっくりに負けないくらいゆっくりしている外ゆっくり。 この対決は長期戦になりそうだ。 3時間後 「ゆぅ、おなかすいてきたね」 「ごはんたべたいね」 内ゆっくりはどうやらお腹が空いてきた様だ。 顔が困り気味になってきている。 「ゆ、つらそうだね、ゆっくりできないの?」 「れいむたちはこんなにゆっくりしているのにね」 外ゆっくりは2匹とも表情一つ崩さずゆっくりしている。 「ゆゆ!?ぜんぜんそんなことないよ、れいむたちはゆっくりしてるよ」 「そうだよ!そっちこそそろそろこうさんしないの?」 やせ我慢をしつつ反論する内ゆっくり達。 それでも根を上げないところ、まだまだ勝負が続くようである。 5時間後。 両者とも未だにゆっくりしている、らしい。 というのも内ゆっくりが相当辛そうだからである。 「ゆぅ、ゆぅ…まだまりさたちはゆっくりしてるよ」 「いいかげん、こうさんしてね…」 対する外ゆっくりは顔色一つ変えない。 「どうみてもゆっくりしてないね!」 「あたらしくまりさたちがそのすをつかってあげるからおとなしくゆっくりしてないってみとめてね!」 形勢は外ゆっくりに傾きかけていた。 その時である。 「かわいいまりさぁぁぁぁぁ!!!みつけたわぁぁぁぁぁ!!!」 「「ありすだぁぁぁぁぁ!!!」」 内ゆっくりが悲痛な叫び声を上げる レイパーアリスの乱入である。 「んほぉぉぉぉぉ!!!!」 「やべでぇぇぇ!!!ずっぎりぃぃぃぃ!!!」 「いやぁぁぁぁ!!すっきりぃぃぃぃぃ!!!」 「べとべとする〜」 「きたないよ〜」 あれよあれよという内に4匹のゆっくりに纏わり、ありすは4回すっきりした。 1匹につき1回である。 それに満足したありすは「またあいてしてあげるわね!」と満足そうに去っていった。 この時内ゆっくりに変化が起きた。 頭からにょきにょきと蔓が生えて、小さな丸いものが蔓からでき始めたのである。 本来なら悲しみに暮れる所である…のだが。 「そ、そうだ!あかちゃんはゆっくりできるんだよ!」 「あかちゃんができたれいむたちはゆっくりできてるんだよ!」 「あかちゃんができてないれいむとまりさはゆっくりできてないね!」 ここぞとばかりの反撃である。 赤ちゃんはゆっくりできるという考えから外ゆっくりに対して優位に立ったと思ったのだ。 「それじゃ、そのあかちゃんがゆっくりできてるかゆっくりしながらみるよ!」 「まだまだまりさたちはゆっくりしてるよ!」 勝負がついたと思いきや、まだまだ決着に時間は掛かりそうだ。 8時間後。 辺りはかなり暗くなってきている。 この時間は捕食者の活動時間だ。 「ゆ、ゆぅ、ゆっくりねむくなってきたよ…」 「だめだよれいむ!ねたらまけちゃうよ!」 見るからにやせこけはじめている内ゆっくり。 子供に餡子を吸われているのだろうか、食事も摂っていない事もくわわりかなりゆっくりできていない状態である。 「ゆぅ…ねむいよ…」 「もうすこしゆっくりしたらおうちがてにはいるよ!だからゆっくりしようよ!」 対する外ゆっくりも眠気に追いやられ始めている。 このまま引き分けで終わり、かと思われたその瞬間。 再び状況は変化する。 「うーうー」 「「れみりゃだぁぁぁぁ!!!」」 またも叫び声を上げる内ゆっくり。 それも無理は無い。捕食種のれみりゃが現れたのだから。 「あまあまー」 「やべてぇぇぇぇ」 かぷりと内れいむの蔓に生った赤ん坊を口に含んでいく。 「れいむのあかちゃんがぁぁぁぁ」 「れいむとまりさはさわいでゆっくりできてないね!」 捕食種がいるというのに外ゆっくりは意に介さないでゆっくりしている。 「こっちもあまあま…うー、こっちはふかふかー」 れみりゃは外ゆっくりの感触が気に入ったようで暫く掴んだりはむはむして戯れていた。 「れみりゃはゆっくりしてるね!」 「こんなゆっくりできるれみりゃがゆっくりできないなんていうゆっくりはゆっくりできてないね!」 「ばだだよ、ばだでいぶだぢばゆっぐりでぎでるよ!」 「おぶぢばわだざないがらね!」 自分の家を守ろうとする内れいむと内まりさ。 ここまで来るともう誰が見てもゆっくりできていないと見えるのだろうが、そんな事を考えている余裕も無かった。 それでもギブアップ宣言をしていないのでまだ勝負は続くのだ。 絶対に勝つ、内ゆっくりはその為だけに耐えていた。 空腹にも無理矢理すっきりさせられた事に対しても、れみりゃに赤ちゃんを食べられた事も。 いつしかれみりゃは空の彼方へ飛び去っていった。 それでもまだゆっくり勝負は決着がつかない。 10時間後。 「ゆ、ゆがぁぁぁぁぁ!!!」 「もうゆっくりしょうぶなんていいよ!ゆっくりつぶれてね!」 遂に内ゆっくりがキレた。 内まりさは外まりさを押しつぶそうとし、内れいむは外れいむに体当たりをする。 「ゆ!?ゆっくりできないんだね?こうげきするなんてれいむとまりさはゆっくりできてないんだね!」 突然の体当たりに驚きながら、しかし全然効いていないらしくケロッとした顔で外れいむは問い詰める。 「ゆっくりしてるよ!ゆっくりしながらゆっくりできないれいむとまりさをおいだしてるんだよ!」 もう滅茶苦茶な言い分である。 殆ど体力が無いながらも、しゃにむに内まりさと内れいむは外ゆっくりの2匹に攻撃を仕掛け続けた。 「ゆっくりできてないまりさとれいむはつぶれてね!」 これでゆっくりと巣に帰って食事してぐっすり眠れる。 この2匹はそう考えていた。 そして―決着の時がついにきた。 ポタ。 ポタ。 ポツッポツッ ザーザーザーザー 空から落ちてくる無数の雫。 雨の到来である。 「あめさんがふってきたよ!」 「あめさんはゆっくりできないからゆっくりおうちにかえるよ!」 今まで色々な物に耐え、無茶な事を繰り返してきた内ゆっくりもこれには耐えられない。 何しろ雨に当たり続けていると死んでしまうのである。 レイパーのすっきりも捕食者のむーしゃむーしゃもまだ助かる道はあった。 しかし雨となれば話は別である。 もう勝負は付いた、そう思い込んでいる2匹は攻撃を止めて巣穴に戻ろうとして―外ゆっくりに弾き飛ばされた。 「たいあたりしてくるくせにゆっくりしてるなんてれいむはうそつきだね!」 「あめさんをゆっくりできないなんていうなんてまりさはくずなんだね!」 「どぼじでいぎでるのぉぉぉ!!!」 内ゆっくりは潰したと思った外ゆっくりのピンピンした姿に顎をゆがーんと空けていた。 「たいあたりやのしかかりくらいでれいむたちがしぬとおもったの?ばかなの?」 「それにあめさんがゆっくりできないっていったね?だからこのおうちはまりさたちのものだよ!」 勝負は元々巣に住んでいたゆっくりの負けで幕を閉じた。 この雨の中、散々体力を奪われた2匹は、巣を奪い取った2匹が見守る中どこに行く事も出来ず溶けていった。 「あめにとけるなんてだめなゆっくりなんだね!」 「おうちでおみずさんをぬきだそうね!」 この2匹がゆっくり勝負で勝てた理由。 それはスポンジだからである。 勿論スポンジケーキではない、台所や風呂場で使われているスポンジである。 それでもふてぶてしい顔やふんぞり返るような本能はゆっくりそのままだ。 勿論互いのスポンジをすーりすーりしながら交換する事で赤ちゃんだって作れる。 違いはあるが些細な事ばかり。 食べられる事はない、水に溶けない、ぱちゅりーは赤ちゃん用スポンジだったりする。洗剤で泡立つ。 アストロンで金だわしになる、火にすこぶる弱い、食べ物には困らない、潰しても元に戻る。etc。 そんな、饅頭ではないゆっくり。 あとがき 当時真っ二つにされたら分裂するゆっくりを見て、中身が不思議に思った人はどれだけいるのでしょう。 今でこそ餡子が一般的ですが、その前にこうだったのかな、と思う所を少し入れ込んでみたり。 そこに今のゆっくり分を混ぜ込んでみたらこんなのになりました。 普通のゆっくりではすぐ潰してしまう鬼意山でもきっと全力で虐待できることでしょう。 あ、お風呂場にあるスポンジってすぐカビますよね! 今まで書いたもの 博麗神社にて。 炎のゆっくり ゆっくりを育てたら。 ありす育ての名まりさ 長生きドスの群 メガゆっくり ゆっくり畑 益ゆっくりと害ゆっくり ゲスの行き着く先 つかれたまりさ 噂・ゲスの宿命 決断
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緑髪が好き過ぎて電波受信しました。 先にも後にも言います。ごべんなざい。 緑髪萌え、東方キャラ、虐待成分少なめ、どれかでも嫌だと思ったらバックしてね!!! 虐待自体は 『死ねば死に損。生くれば生き得』という文辺りから…かコレ? では、ごゆっくり。 ここの所、死した魂が増えすぎている。長いこと彼岸にいるが、大量の魂が休み無く流れくる様ははじめてだ。 残業もこの半年は毎日。休日も殆ど出勤。しかし、仕方が無い。楽園担当はあたいとあの方なんだし。 「ふう…本日もお疲れ様でした。」お疲れ気味の閻魔様。ちょっと背が低めの裁判長。 「お疲れ様です。…あの、四季様、差し出がましいかもしれませんが、明日はお休みになられた方が。ここ一ヶ月ずっと働き詰めで…。顔色も良くないですし、竹林の医者に診てもらった方がいいと思います。」 対し、彼女の部下。長身で赤い髪の三途の川の船頭。見た目からも威勢のよさが伝わってくる。 「小町、二人きりの時は…。」ゴホン、と咳払い。 「え、あ、スミマセン、映姫様。」急いで言い直す。 「…ええ、そうですね。あれだけの魂を裁判するのは流石に疲れました。他の閻魔に明日は替わってもらうことにします。連絡を取りますのでそこで待っててくださいね。」おもむろに尺を耳にあて、 「あ、もしもし。夜分遅くに失礼します。楽園担当の四季映姫です。実はですね、…え?…はい、解りました。はい。いえ、恐縮です。…はい。…いいえ、勿体無いお言葉です。はい、謹んで頂戴します。はい、それでは失礼します。」ふうっ、と一息つく映姫様。 …え!?あの尺って上司と連絡とれたんだ!あたい、長いこと映姫様と仕事しているけどはじめて見たよ。 「小町、どうかしたのですか?」不思議そうに。 「いいえ何でもないです。映姫様、それでどうだったんですか?」見なかったことにしよう。 「はい、『上半期魂裁き量』が少しばかり多かったという事でお休みを頂けました。」ちょっとだけホッっとした表情で。 「そうですよね~。いやー、よかったよかった!じゃあ、あたいに気にせずバッチリ休んできてください!」そんな制度あったんだ。それと、少しばかり?あたい、河を何往復したっけなぁ?ココだけの話、常時距離短めに設定してたはずなんだけど。 「小町?一緒にいてくれないのですか?」あたいの言葉を聞くや、一転して、ちょっと涙の含み、ちょっとだけ首を傾げて上目遣い。 「…ぐぅっ、…で、でも、あたいはお休み貰えた訳じゃ…。」…えーき様、その表情はっ…!! 「いいえ、貴女もですよ。『貴女の部下にも休みを与えます。』そう仰られました。」我の事のように嬉しそうに語る。 「えっ!本当ですか!いやー、実を言うと、私もクタクタだったんですよね。」あっはっはと大笑い。 「…では、もう一度聞きます。…お休みの間、一緒にいてくれませんか?」服の裾を持ち、なおも上目遣いでお願いされる。 勿論、あたいじゃ耐えられないよ。こんな破壊力の攻撃は。 「ご一緒させて頂きます。貴重な一日ですから有意義に使わないと。」うん、あっさり承諾したね、あたい。一人でのんびり寝たかったけどまあいいか。貴重な休み一日だけど映姫様とすごそう。それはそれで楽しそうだし。 「いえ、今までのお休み返上した分と今回の特別休暇を合わせて、頂いたお休みは1ヶ月なのですが…。」ん? 「あ、小町、大丈夫ですよ。私たちが休みの間は他の閻魔が補ってくれるそうですから。貴女が真面目になってくれて私も嬉しいです。」え?いや違、 「本当に有難う御座います。実は休暇の最中は官舎が使えないので小町を頼るしかなかったのです。」いやだから、 「ちょっとだけ待っていてください。官舎の私物をまとめて来ますから。」えーき様?ちょっとー? あれ?もしかして、あたい、図られたのか?官舎で過ごせないって本当なのかなぁ?えーき様は閻魔だから嘘つかないと思うけど。嬉しいけれど、なんかなぁ。なんだろ、釈然としない。 しばらくして、小さい手荷物を持った映姫様が戻ってきて、 「お待たせしました、小町。では行きましょう!」えーき様?顔色良くなってませんか? 「…わぁ、ここが小町のお家…。」そんなに珍しい家でもないと思いますよ。 「ええと、二人で生活するのには狭いので少し距離を伸ばしてみました。お布団はそこの襖にある来客用のを使ってください。それから…」一ヶ月となると不足するものが出てくるはず。あー、あした買い足しもしなきゃ。 「二人で生活…あ、小町のお部屋。」ちょっとー?えーき様?聞いてますかー?勝手に人の家のふすま開けるのは良くないと思います。 「ごほん、…はい、解りました。」 「…遅めですが夕飯の支度しますね。ちょうど映姫様の好きなのありますから。」 映姫様は質素を好む。質素と言っても一汁一菜と例えが出来るほど粗食であるというわけではないが。 おにぎりは味付けに塩を振っただけの物を好むし、神の身分であるのにも関わらず、お酒に弱いので嗜好品はお茶くらい。味気ない物が好きなのだ。 だが、その味気ない物の魅力を知り尽くしているので、それらを損なうものにはそれはもう、もの酷く嫌悪する。 一度、おにぎりの具で口論したことがあるから間違いない。 「小町、貴女は、お米本来の甘みを理解しているのですか?…そう、貴女はお米本来の味を蔑ろにし過ぎる…。わ、私と…同じ食生活をするのが、貴女にできる善行よ。」 「ぅ…解りましたよ映姫様、でも、おにぎりの具はツナが最高ですよ…。」 というやり取りがあったため、映姫様の好きな物は大体わかるようになってしまった。 その日の夕ご飯は、焼き鮭ときゅうりの漬物とお浸し、薬味を乗せたお豆腐、そしてほかほかのご飯。 「いただきます。」食前には映姫様は必ず忘れずに言う。前までは、一人で暮らしている時間が長かったせいかいつの間にか言わなくなっていた。それが理由で映姫様に凄く怒られたこともあったのでその日からは家で一人の時でも食べる前には「いただきます。」を忘れないようになった。 美味しそうに食べてくれるので、あたいも嬉しくなる。お茶碗に米粒一つ残さず食べ、「ご馳走様でした。」映姫様が言う。 「いえ、お粗末様でした。あたいはかたづけるんで、映姫様はお風呂沸かしてあるので先どうぞ。」 映姫様は何度も片づけを手伝いたいと言ったが、「今日はあたいに任せてください。」と笑って言ったら了承してくれた。 片付け後、映姫様が風呂から上がったのであたいも風呂に入る。久々の休みを前にして湯に浸かると、骨からも疲れが染み出している感じがして、すねの中あたりがむずかゆくなった気がした。風呂をあがり寝室に行くと、水色のパジャマを着た映姫様がお布団を二つ並べて敷いて正座していた。 「小町、今日はもう寝ましょう。」ポンポンと隣の布団を叩く。数時間前のクタクタ顔の貴女は何処ですか? 「あー…、いや、せっかく広くしたんですし、布団は離しても平気ですよ。あたい寝相悪いですし。」一応、気を使ったんですけどね。 「構いません。明かりを消したいので早く布団に入ってください。」聞く耳持ってくれませんか。そうですか。 「小町、お疲れ様。…おやすみなさい。」布団を目元までかぶってコッチ見ないでください。やばいですから。主に理性が。 「はい、映姫様、おやすみなさい。」あー、でも、本当に疲れた。オヤスミナサイです。 お互い共に長い重労働をしていたわけで、今までの疲れが出たのかぐっすり眠れた。 翌日、寝坊したら映姫様に怒られた。 「早起きは三文の徳という言葉はですね…。」いつもの説法が始まる。 しかしまぁ、なんでこの方は朝から元気なんだろ。どうもあたいは朝に弱くて困る。 「朝ごはんは私が作っておきました。顔を洗ってきてください。」半覚醒の鼻でも解る、いい匂い。 映姫様の手料理が食べられるのは嬉しいけれど、食べてる最中に何度も「美味しいですか?」「味付け濃くありませんでしたか?」とモジモジしながら聞いてくるのはやめてください。反則ですよ。 朝ごはんも済ませたので、当初の予定通り竹林の八意永琳のところへ。距離を操ればすぐに到着。 永遠亭に到着すると、見知った月兎と幸運の兎がビックリした表情で此方を見ていた。 映姫様の軽い説法のあと、事情を説明すると奥に通され、八意永琳が笑顔で診察してくれた。 少女診察中…。 「四季さん、貴女はきちんと休みを取っていますか?……コホン…そう、貴女は働きすぎる。長期休暇を取る事が貴女にできる療養よ。…ふふ、なんてね♪」八意永琳が誰かの物まねをしながら診断結果を伝えてくれる。 「台詞取らないでください。怒りますよ。」尺を取り出すえーき様。 「四季様、尺はしまって下さい。…それなら、既に長期休暇もらったから大丈夫だわ。」えーき様の前に割り込み、答える。 「あらそう。手が早い患者だと楽で助かるわ。お代は結構よ。…もし今後、体調不良を感じたら直ぐにいらして。」年ふそうお…相応の悪戯っぽい笑顔。 「ああ、そうさせてもらうよ。それじゃ、映…四季様、行きましょうか。」セリフ取られてちょっと不機嫌そうなえーき様に。 帰りの道中、何とか不機嫌が解除された映姫様が、 「せっかくですから花の時に私の裁きを受けた皆さんの様子を見て回りましょう。」 との事であちこち回ることになった。買い足しは明日だなこりゃ…。 紅魔館→湖→冥界→神社→山→太陽の畑→我が家が、もっとも最短だね。…距離を操れるが、長距離は疲れるから操る範囲は短くしたい。…あたいはこういう時だけは計算速いわ。…まあ、何はともあれ早く済ませてのんびりしたいなぁ。 紅魔館の門が見える位の距離につくなり目当ての人物がいた。門番を叱っているようだった。…うわぁ、門番の帽子になんか生えてる。 「ああ、理解しているようですね。そう、叱る事の本質は『優しさ』なのです。」 なにやらウンウンと頷き満足された様なので次に行くことにした。 優しい人ってナイフ刺すの? 湖では目当ての存在が二人いた。未だ幼稚なものは人も妖怪も良く遊ぶ。目当ての存在以外にも4匹の妖精妖怪が居た。種類も性質も違う妖怪が仲良く群れているのは珍しい。 「まあ、この程度の『混沌』ならば良しとしましょう。…妖精の方は、『迷惑』をかけ過ぎているようですが、もう一匹の妖精がある程度自制させているみたいですね、このまま良い方向に向かうといいのですが。」 もうこの場はいいらしい。じゃあ次行きますか。 とまあ、このように遠くから観察し、教えを守れて無い様だったら出て行って改めさせるつもりだったようで。続く半霊も食いしん坊の主の世話で剣を振るう事すら出来ない様子で、騒霊達も、 「レイラのお洋服見つかったよ~。」「絶対に忘れるもんですか!あの子の分までずっと騒ぎ続けてやるもん。」「…閻魔様のお陰ね。…私達は曖昧にしてはいけないの。…私達は、あの子を忘れてはいけないの。」 …形見探ししてた。「うん、よいよい。」感謝の言葉まで聞けて映姫様も満足してるっぽい。 幻想卿でもっとも有名な場所では、紅白と黒白が仲良くお茶をしていた。 「おお、霊夢、閻魔と超サボリ魔がきたぞ。」黒白。五月蝿いねあんた。 「珍しいわね。まあ、お茶くらいなら出すわよ。」紅白。 少し話をし、休憩させてもらうことに。 ちゃぶ台の上には湯飲みが二つ。…あ、お茶菓子は羊羹だ。あたいとえーき様の共通の好物。そういえば忙しくなる前以来食べてなかったなぁ。 「はい、美味しかったらお賽銭入れていってね。。」あたいから賽銭たかろうとする巫女。いい根性してるよ。 しかし久しぶりのお茶の時間。えーき様もホクホク顔だ。そりゃ久しぶりの羊羹だもん。 「「いただきまーす♪」」二人の声がはもる。 一口食べてみてビックリ。…え!?全然美味しくない?羊羹だよねこれ?思わず映姫様の方を見る。 …うあ、物凄く怒ってらっしゃる。四季様、落ち着いて!! 「霊夢、これは、何ですか?」 「え?羊羹よ?お茶には羊羹か煎餅よ。」お茶ジャンキーが豪語する。 「…後半は非常に同意しますが、非常に残念です。内心ではお茶友と思っていた貴女も変わってしまったのね…。」聞いたことないけれど残念な事だけは良く解りました。 「ちょっと!何か問題でも有るの!?」 「コレが羊羹とでも少しでも思ってるのですか?」 「や、安物なのは認めるけど!れっきとした羊羹じゃない!」 「食べ物を粗末には出来ませんので頂きますが、コレは羊羹ではありません。まがい物です。白黒ハッキリつけました。」 黒白はニヤニヤしながら見ている。根はいい奴なんだろうけど、本当にコイツは他人のドタコタが好きなんだねぇ。さっきのお礼もかねて小突いてやりたいよ。 「とにかく、コレは何という名前の羊羹モドキでしょうか?」 「…コレよ『銘菓ゆっくり羊羹』よ。」 「……解りました。…今度、会う時の貴女は前のお茶友に戻っている事を期待しています。行きますよ、小町。」 去っていく二人を見送りつつ、 「く、…なんか非常に腹が立つわね。…でも、久しく普通の羊羹食べてないわねぇ。」 賽銭を貰えず仕舞いだった巫女がポツリと言った。 心の友人を失ったかの様なえーき様。酷く萎えてしまったので、帰り道でもある太陽の丘を訪ねて今日はもう家に帰ることになった。 正直言うと丘には行きたくない。あそこに居るのは酷く強烈な妖怪だから。 途中、何かの結界があったようだが距離を縮めて移動していたし、無害だったので気にせず屋敷前まで飛んだ。 「こら、…そんなにしては、ダメでしょう?」 屋敷の中から声が聞こえて来た。うん、この声は覚えている。ボトルネックって言ったあの声。 「でも、幽香の蜜…美味しいよ?」 どっかで聞いた声。まだ幼い感じがする…って何の会話だよ!…あ、えーき様がプルプル震えていらっしゃる。 「いけません!白昼堂々何をしているのですか!!」凄い勢いで声の方へ走るえーき様。 仕方ないので少し離れて追いかけるか。 「あら、盗み聞きをして人の屋敷に勝手に進入するのが閻魔様流の作法なのかしら?」 声のしたほうから凄い魔力を感じた。…ああぁぁぁ、あたいもうしらない! 「小町、早く着なさい!」高らかに呼ばれるあたいの名前。…もう、どうにでもなれ。 「幽香、ティータイムは優雅に、だよ。」もう一人の声。 「ふふ…、そうだったわね。」緩む緊張。空気も館の壁もホッとしたに違いない。 声のした場所に着くとえーき様が懐から尺を取り出す動作で固まっていた。なんでもない、ただお茶を飲んでいる二人が居ただけだった。 「ま、気分がいいから無作法は大目に見るわ。…貴女達も呼ばれていきなさいな。」既に椅子に座り紅茶を口に運ぶ。その動作の後、ハニーティーを飲んでいた緑髪の少女が立ち上がり、椅子を2脚引き、どうぞ、と手で示した。 「私が満足できるレベルのお茶を淹れれるようになって偉いわ。…この二人には緑茶を出してあげて。」 固まったえーき様を引きずって椅子に座らせ、あたいも隣の席に座る。 …しかし、前にあった時とえらく印象変わったなこの妖怪。 「らしくないわね、閻魔様。いったい何があって?」少女がキッチンに向かうと花の主が語りかけてきた。 「いや、実は、さっき巫女の所で羊羹を出されて」答えるのはあたい。えーき様は自分自身がさっき考えた愚かな事を改めているんだろう。動かない。 「ふむ、それで?」続けなさい。そう続く気がして。 「四季様もあたしも言ったんだ。非常に美味くないって。なんていうか、紛い物と言うか…。」 「…へぇ、閻魔様の能力は冴えたままね。…さっきの有様は見なかったことにするわ。」 キッチンから緑髪の少女がティーセットを持って歩いてくる。 「ご苦労様、リグル。…あら、言われなくても緑茶に合うお茶請けを用意するなんてね。」 「うん、緑茶には羊羹か煎餅って前に霊夢が言ってたから。」緑茶ジャンキーのお茶布教は凄いな。 どうぞと、目の前に出されたのはいい感じで湯気の立っている緑茶と、みずみずしい羊羹。あ、茶柱。 えーき様の前にも出される。…と、止まった時間が動き出したようで。 「…失礼しました。自身の愚かさを改めるのに時間がかかってしまいました。」 キラキラと光る目は明らかに羊羹しか見ていない。 「「いただきまーす♪」」またはもった。 …!!そう!コレだよ!!上品な甘み、なのに解るほんの僅かな塩気。お茶での熱を受けた舌の熱をほのかに冷やすコレ。ココ来て良かった、客人がそう思える一品だよ。 ね、えーきさ…泣いてる! 「…風見幽香。」 「なにかしら?」 「…ありがとう。」 「いえ。どういたしまして。」 「…こんど、白い桜の下でお茶会しましょう。…久しぶりです。これほどの一品は。」落涙の羊羹。 「あら、白桜なんて久しく見ていなかったわ。楽しみね。」 「幻想卿から本物の羊羹が死んだのかと思い、いつ裁いたか考えていたところです。まだ生きてましたか。」ふふ、と笑う映姫様。 「いえ、ほぼ死んでいるわね。小豆製品は特に。」 曰く、二人で歩いていたら、たまたま出くわした人間の農夫と菓子職人に豊穣の神(秋姉妹)と間違えられ相談を受けたと。 人間の里の小豆を使う菓子はコストの極めて安い代替品に取って代わられ廃れたと。 気分が良かったのでその人間には恐怖を与えなかったと。 『死ねば死に損。生くれば生き得』されどアレ等に関してだけ言えば、我等は二度損。 我が家に戻った後、二人で話し合った。 「小町。魂が増えた理由がこれほどしょうもない事だったと思うと腹が立ちませんか?」 「ええ、映姫様。あたし達の共通の楽しみを迫害し、あまつさえ己のみ『ゆっくり』し、私たちを『ゆっくりさせてくれない』存在とは。」 「嘆かわしいです。」 「しかも、徳の無い連中ですから運賃も限りなく0に近いですし。アレの魂が溢れても我々は商売上がったりですよ。」 「変な物が流行りますね。はぁ…。」確かに、いま思い返せば、裁き量と比例して増えるはずの運賃も雀の涙ほどしかなかった。 ともかく、映姫様の提案で休みの内でも特に暇な日は、聞き込み調査、永遠亭で奴等のレポートを見せてもらったり、実際に観察などをしてヤツ等を詳しく調べることにした。 食料を見つければ 「ゆっ!これはまりさがみつけたんだよ!!」 「ちがうよ!これはれーむのだよ!!」 「まりさの!!さっさとあっちいってね!!」体当たり。 「ゆっぐり!!!そっちこそあっちいってね!!!」 数分経っても言い争う。この行為自体がもはや『ゆっくり』では無い。 「しね、ゆっくりしね!!」飛来する1匹。 「あ゛あ゛あ゛あぁぁぁ!!!れーむをたべてね!!!!」 「まままま、まりさのほうがおいしいよ!!!」 お互い食われる。 分け合えば悲劇を回避できたかもしれないのに。 家族連れの固体。 親が持ちこんだエサにかぶりつく子。 子供達よ。あいさつは?おかえりなさいといただきますは? 親も、ただいまは?めしあがれは? 「うまかった!またもってきてね!」 ごちそうさまは? この種にとって、家族ってなんなのかしら。 腹が空けば食い、眠ければ眠る。…他人の迷惑など省みない。考えたことも無い。 家族という枠は形骸化し、わが子を忘れる。…霊になっても家族を大切にする存在も居るのに。 親が子を殺し、子が親を殺す。殺し、食う。…恐ろしいほどに混沌とした。 ゆっくりするという本来の意味を違え、惰性を貪る。…偽りの優しさで誤魔化した惰性。 友を裏切る事に躊躇なく、生にしがみつく。 少数の良識ある同種を迫害し殺す。殺しあざ笑う。 強者に媚びへつらい、弱者には厳しい。 人の様に考え改める事もなくいつまでも「ゆっくり」する事にのみ執着する。 徳も何もあったものではない。 積もるのは軽蔑。 …確かに花の主や天才薬士から聞いた通りかもしれない。彼女等はアレ等をモルモット以下のように扱う。初めは「なんと罪深きことか」と思ったが、今となってはそれも無理はないのかもしれないと思える。そうでもしないと価値がない。 全ての魂には生まれた意味がある。意味があるから生前の行いを裁く。生まれた意味の無い魂になんの価値があるといえよう? 裁く意味はありきや?輪廻転生させる意味はありきや? もう、どんな弁護がなされても裁判長の心証は変わらないであろう。 答えなど、言うまでもなかった。 復帰開けの初日、大量の魂を一度に裁判すると仰った四季様。異例の事なので臨時で裁判員が4人か選出された。四季様の直属の部下であるあたいが居てもいいのか疑問だが、まあいいや。傍聴席で見る法廷とはまた違う、などと、どうでもいい事を考えていた。 「静粛に。判決を言い渡す。汝等は八熱、八寒地獄めぐりの刑に処す。以上。」 あたいに言わせればまあ当然かなと。事前に奴等の生前の行いを見ている裁判員も当然といった感じ。…だが、傍聴席はどよめく。これほどの重い判決を言い渡された法廷に立ち会ったことなど一度もないのであろう。 「「「ゆゆ!あついのもさむいのもやだよ!ゆっくりできないよ!!」」」ゆっくり脳でも語感から熱いのか寒いのかは理解できたらしい。もっとも、どういうレベルで熱く、寒いのかは理解できまい。これに関していえば、生者が理解しうれる訳がないのだが。 「では、地獄、タルタロス、ジャハンナムから好きなのを選びなさい。それらに続く扉はあちら。」3つの扉。 「どれがいちばんゆっくりできるの?」死しても基準はそこか。 「これにて閉廷します。魂は速やかに自分の行きたい場所へ行きなさい。」答えない。次の法廷があるから。 閉廷し、取り残される魂たち。自分達はなぜかここから出ることが出来ない。進めそうなのは3つの扉だけ。 ここに居てもゆっくり出来そうにもないので脱出するしかない。満場一致だった。 徐々に各々の好きな扉に消えていくゆっくりソウル。取り残された二匹。 「ゆ!れーむはどれにする!?」隣のゆっくりに意見を伺う。 「これにする!まりさもいっしょにきてゆっくりしよう!!」『じごく』と書かれた扉の方に進む。 「ゆゆゆ、そうだね!!これだけもじがまるいもんね!!」 仲良く並んでその扉をくぐった。 …意識が回復すると、そこは何も無いただ広いだけの空間だった。 ゆっくりれいむは初めて見る地平線に驚いたが、そんなことよりも 「まりさー?どこー!!」一緒にきた仲間が近くに居ないかきになった。 「ゆ!れーむ!!ここだよ!!」なんだ、すぐそばに居たじゃないか。 呼ばれたほうに行こうとすると、まりさのうしろには恐ろしい形相をした人型の存在が。手にはとげとげのついた棒を持っている。 「まま、まりさ、そのおじさんもゆっくりできるひとなの!?」本能で解る、コレはゆっくりできないオーラを放っている。 「ゆー??」言われて初めて後ろの存在に気づき振り返る。 刹那、獄卒は手に持った金棒を振り下ろす。 「ゆべっっ!!!!」中身を四散させ絶命するゆまりさ。 「ドおじでごんなごどずるのぉぉぉぉ!!!」叫ぶれいむ。 だが、あの恐ろしいのが今度は自分を狙って来たら…、そう思うと少しずつ距離を離していた。 「ゆゆゆ・・・ゆっくりー!!!」あれ?潰れたはずのまりさが元に戻った。 復活してまもなく獄卒はゆまりさの皮を剥ぎ出した。 「ぎゅぅぅぅ!!!いだいよぉぉぉ!!!れいむぅぅぅ!!!」 「まりさ!!がんばって!!ゆっくりできるまでたえて!!」怖くて近寄れない。遠くから声をかけることで精一杯だった。 「ぎゅうううう!!!れーむのせいだ!!!こんなところをえらんだれーむのせいだ!!!れーむなんてだいきら…ぶぎゃ!!!」 言い終わることもなく再び潰された。 「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!!まりざにぎらばれだぁぁぁ!!!」泣きながら後ずさる。 すぐに再生するゆまりさ。 「れいむなんでだいっぎらいだぁ!!!ほがのどごろならぎっどごんなごどなかった!!!ごごじゃないどごにす…ゆぐぅ!!」 殺されながら恨み言をいうゆまりさにゆれいむは恐ろしさを感じざる終えなかった。恨み言を言われ死んで、再生して恨み言を言われ…。 今すぐこの場から逃げ出そう。嫌なのからはすぐ逃げるゆっくり達の本質。そう思い後ずさりながら離れようとした。が、 ドン! 何かにぶつかった。 「ゆー??」振り返った所で何かがめり込んだ。 獄卒にとってはいつもの事。対象が人間でないのは珍しいが、自分達は500年間この責め苦を与えればよいだけ。 淡々と仕事をこなす。 だが、この等活地獄に落ちたゆっくりは運が良かったのかもしれない。 運の悪いゆっくりの何匹かは寒獄の七、鉢特摩地獄に落ちた。 血液すら凍る寒獄中の監獄。 「あばばば!!!ざむずぎで…」最後まで言葉を発することもなく力尽きた。極寒で皮膚が裂け、流出した体液が餡の花を咲かせた。 未来永劫、終わりが見えぬ責め苦のフルコース。 生物として、畜生にすら劣る業と、四季映姫の好きな物を蔑ろにした罰から考えたら必然だったのかもしれない。 おしまい。 ~おまけ~ 「四…映姫様、三つ示した意味がなかったのでは?」 「気分です。」 「そうですか。どれも一緒なのになぁ。」 「そんな事より小町、…裁判官の服、似合ってますよ。」 「へへぇ、そうですか?」 「小町さえよろしければ、私の秘書にでも…」 「いえぇ、あたいは彼岸の船頭でいいんです。性に合ってますし、これからも映姫様の部下でいたいですし。」 「そ、そうですか。それでは明日からは三途の船頭をよろしく頼みますよ。」 「はい!まかせといてください!」 ~あとがき~ まずは一言。 ごべんなざい。 地獄での責め苦は皆さんにバトンタッチさせてください。紅蓮の花ではなく、餡蓮の花が咲かせたかっただけです。 結局、花です。なんか書いちゃったので投下させてもらいました。 『ゆっくり以外の部分で糖分を』っていうテーマで書いて、ゆっくりのアイデンティティを虐待しているつもりなのでこうなりました。過去作も。 そんなことより、緑髪が可愛すぎるんですよ。不思議です。 Y・Y
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ゆっくりるーみあ 「なのかー」 夕闇の空のなかゆっくりるーみあが空を飛んでいた。 美しい金髪、紅く燃える瞳、ゆっくり種の中でも段違いに白く美しい肌。 ゆっくりるーみあは肉食種であるが、基本的にのんびりとしていて実にゆっくりらしい性格である。 「わはー」 笑顔ではねるゆっくりるーみあ。 宵闇ゆっくりとも言われるゆっくりるーみあにとって夕闇の時間帯は一番心躍る時間帯であるのだ。 これから来る楽しくて心地の良い夜。 西の空を眺めながら完全な日没を心待ちにしている。 地面にうつるゆっくりるーみあの影が徐々に長くなっていく。 辺りは暗さを増し、徐々に徐々にと闇が支配していった。 今夜は雲一つ無い美しい夜である。 月の蒼い光に美しい肌と金髪が生える。 さほどお腹が空いていなかったため原っぱでゆっくりと月光浴をすることにしたゆっくりるーみあ。 「きょうは満月なのかー」 紅い瞳が楽しそうに気持ち良さそうに笑う。 ゆっくりるーみあにとってここまで心地の良い夜も久しぶりだった。 ゆっくりるーみあが時を忘れ月光浴を楽しんでいると、月に黒いシルエットが横切る。 一つ、二つ、三つ、四つ。 「とりなのかー」 ゆっくりるーみあは小型の鳥も食べる。 もし捕食できるサイズだったら晩飯でもいいなと思いながらゆっくりと眺めていると、 影がこちらへと近づいてきた。 宵闇ゆっくりであるゆっくりるーみあは夜目が利く。 長く伸びた牙、奇妙な形の翼。 近づいてくるそれらがゆっくりフランであることに気づく。 「危険なのかー」 ゆっくりるーみあも肉食種であるが、同じ肉食種の、れみりゃ、フランに比べると段違いにゆっくりるーみあは弱い。 下手をすればゆっくり霊夢の群れに負ける程である。 慌てて逃げ始めるゆっくりるーみあ。 相手は肉食種最強の四匹のゆっくりフランである。 当然るーみあに勝ち目は無い。 飛び出すものの、その速度は実にゆっくりで、高スピード、高攻撃力が売りのアサルトゆっくりの異名をもつゆっくりフランから逃げ切れるはずは無い。 「ゆっくりしね!!」 上の方から叩きつけられ、錐揉み回転しながら落ちていくゆっくりるーみあ。 「やーーー、なっ!!」 鈍い音をだして叩きつけられるゆっくりるーみあ。 他のゆっくりよりも頑丈なため一命は取り留めるもののダメージは大きい。 「もうだめなのかー」 ゆっくりるーみあはもう諦めていた。 この四匹のゆっくりフラン達に食い裂かれるのだ。 ゆっくりフラン達が近づいてくる。 「うー、うー」 それぞれ楽しそうに声を上げるゆっくりフラン。 「いだぁあ!!」 ゆっくりフランがゆっくりるーみあの背中に噛み付き引きずっていく。 「うー、うー」 刺すような痛みの中捕食される恐怖に震えるるーみあ。 四匹のゆっくりフランがゆっくりるーみあを取り囲む。 ゆっくりるーみあにとっては本当に恐怖である。 「うー、うー」 首狩族のようにゆっくりるーみあの周りで声を上げながら反応を楽しむゆっくりフラン。 ゆっくりフラン、その性格が残虐と言われるのは、獲物を捕食前に甚振るのが所以である。 嗜虐心を煽るゆっくりるーみあのその様子はゆっくりフランにとって何よりのご馳走だった。 突然、ゆっくりるーみあの体に衝撃が走る。 「飛ばされるのかー」 そのまま地面に落ちころころと転がる。 「うー」 ゆっくりフランが転がってきたゆっくりるーみあに体当たりを加える。 「また飛ばされるのかー」 再び宙に舞うゆっくりるーみあ。 蹴鞠のように弄ばれるゆっくりるーみあ。 「うー、うー」 「ゆっくり死ね、ゆっくり死ね」 歓喜の声をあげるゆっくりフランとは対照に擦り傷を増やし、声をか細くしていくるーみあ。 「やめてー」 もういっその事一思いに食べて欲しかった。 残酷なゆっくりフランの仕打ちに心身ともに甚振られていく。 残酷な蹴鞠はしばらく続き、もうゆっくりるーみあは傷だらけで偶に声をあげる程になっていた。 これで仕上げとばかりに大木に向かって一匹のゆっくりフランが大木に当たるよう目一杯体当たりをする。 「ゆっくりしね!!」 渾身の体当たりを受け飛んでいくゆっくりるーみあ。 薄れ行く景色のしかしの中で迫ってくる大木が見えた。 「も、もうだめなのかー」 その様子を楽しげに見守るゆっくりフランたち。 そのとき、突然突風が吹いた。 ゆっくりるーみあは突風にその進路を変えられ、木の枝に一度引っかかったあと墜落した。 仕損じた。 その様子を見て、落下地点へと駆け寄るフランたち。 どうやら茂みに落ちたらしいが、直ぐに場所の見当が付いた。 ゆっくりるーみあがつけていたと思われる真っ赤なリボンが茂みに引っかかっていたからである。 「うー、うー」 それを見つけ仲間達を呼び寄せる。 もう、逃げる体力はあるまい、そう踏んで余裕たっぷりに茂みに集まる四匹のゆっくりフラン。 みな、にやにやしながらこれからの残酷な宴の想像をしていた。 突然茂みから黒い影が猛スピードで飛び出す。 「うーーーーーーー!!」 ゆっくりフランのうちの一匹が大きな悲鳴を上げた。 仲間達が悲鳴の先を見ると、リボンが外れたゆっくりるーみあがフランに喰らい付いている。 「がっ、がっ」 何故弱小種であるはずのゆっくりるーみあが仲間を? 三匹のゆっくりフラン達が呆然としている間に、ゆっくりるーみあがゆっくりフランの頬を噛み切った。 「うーーーーーっ!!」 今まで外敵に攻撃など受けたことの無いゆっくりフランである。 大きな混乱に包まれていた。 口の端から餡子を漏らしながら美味しそうに咀嚼するるーみあ。 仲間が固まっているうちに、震えるばかりのゆっくりフランに噛み付いては、引きちぎり、噛み付いては引きちぎり。 もうゆっくりフランは見る影も無く、皮と餡子の塊に成れ果てていた。 「ゆっくりしてくのかー」 先ほどとは別ゆっくりのような様子のゆっくりるーみあに突進していく一匹のゆっくりフラン。 このゆっくりフランはゆっくりるーみあに同胞が負けたのは奇襲のせいだと踏んだのだ。 遺されたフランたちは判断を誤った。 「うーーー」 一直線にゆっくりるーみあに向かっていくゆっくりフラン。 衝突すると思った次の瞬間。 「うっ!!」 ゆっくりるーみあは消え冷たい土の感触。 「うっ!? うっ!?」 混乱しながら辺りを見回すゆっくりフラン。 そのとき上に気配を感じた。 「う?」 上を見上げたときにはもう遅い。 上空から自重と重力を利用して突っ込んでくるゆっくりるーみあ。 「ぶべぇ!!」 二匹目のゆっくりフランも醜く餡子を漏らし潰れた。 一瞬で最強種といっても過言ではないゆっくりフランを絶命させたゆっくりるーみあ。 「あわわわわわわ」 目を見開き、口を広げ震える二匹のフランに向き直るゆっくりるーみあ。 真っ赤に燃える瞳は地獄のよう。 普通のゆっくりるーみあとはもはや別種と言っていいほど、雰囲気が変わっていた。 ゆっくりるーみあには震えながら羽を広げる姿が十字架のように見えた。 「フランは磔にされました?」 そう笑い声を上げるゆっくりるーみあ。 ゆっくりフランが別々の方向へと逃げ出した。 「ううーー、うー」 そのゆっくりフランは全速力で夜の闇を飛んでいた。 理解できなかった。 なぜ弱小種であるるーみあにここまでフランたちが圧倒されたのか。 そのときゆっくりフランは初めて恐怖という感情を覚えた。 いままで、自分達に追い詰められた獲物は成す術も無く甚振られ死んでいった。 反撃を試みてくる種もいたが、全て一蹴にした。 なのになぜ、あいつは、あいつは。 「うーっ!!」 遠くから、同種のものと思われる悲鳴が聞こえた。 どうやら自分はターゲットにされなかったようだと、安堵のため息をつくゆっくりフラン。 自分は助かった。 当分は湖周辺に篭ろう。 そうだ、ゆっくりれみりゃたちを苛めて楽しく過ごせばいいのだ、 「なんで、逃げるの」 突然後ろから声がした。 忘れもしないあのゆっくりるーみあの残酷でよく通る冷たい声。 緊張で再びピーンと羽を広げるフラン。 くすくす、という笑い声の後 「フランは磔にされました」 それがゆっくりフランが聞いた最後の音であった。 ゆっくり大辞典:ゆっくりるーみあ 夜行性かつ肉食だが大概のるみーあ種はのんびりとした性格で ゆっくりを捕食するよりも小型動物や昆虫を食し、月夜の晩にゆっくりとしていることが多い。 しかし、頭部のリボンが外れた場合、運動能力が増し上位肉食種と拮抗して戦闘する事例も報告されている その日も綺麗な満月だった。 リボンをつけていないゆっくりるーみあは月光を浴びながら、原っぱで気持ち良さそうにゆっくりとしていた。 written by TAKATA
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ここはゆっくり霊夢の家族が住んでいる巣 お母さん霊夢を中心に5匹ほどのゆっくり霊夢の子供達が中むつまじく生活している。 このお母さん霊夢は成体で、繁殖をしても黒ずんで朽ちることなく無く今も娘達を優しく守っている。 この平和なゆっくりの巣に発情させたゆっくりアリスを放り込んでみた。 だらしなくよだれを垂らしながら「ゆっゆっゆっくりしていってねええええええええ!!!」とわき目も振らずにお母さん霊夢に突進するゆっくりアリス。 がっちりとゆっくりアリスに押さえ込まれたお母さん霊夢、すぐさま交尾が始まった。 「ゆ゛っ……ゆ゛っゆゆっ!!!」苦しげなお母さん霊夢。 小刻みに震え、切なげな声を出すゆっくりアリス。 娘霊夢たちはわけもわからずガタガタ震えることしか出来ない。 そして「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛」と一際大きなお母さん霊夢の声、交尾が終わったようだ。 頭から茎を伸ばしながらもこれでゆっくりできると一安心のお母さん霊夢、だがそこで終わりではなかった。 すぐさま連続して交尾に移ろうとするゆっくりアリス、さすがのお母さん霊夢も「ゆ、ゆっくりしようよ!!!」と危険を察したのか娘達をかばいながらあとずさる。 「れ、れいむううううううううううううう」飛びかかるゆっくりアリス、交尾を終えたばかりで体力を失っているお母さん霊夢が逃げられるわけも無く、再び行われる交尾。 2回目の交尾が終わり、茎ももう一本生え息も絶え絶えなお母さん霊夢、だが発情したゆっくりアリスはお母さん霊夢が朽ちないことが分かると更に交尾をするためにお母さん霊夢に飛びつく。 そうして繰り返される交尾。 発情期のゆっくりアリスの持久力は凄まじく、勢いは衰えることは無い。 お母さん霊夢は限界が近いのか「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」と朽ち果てる前に出すような異様な声を時折出すようになってきた。 ただならぬ気配を感じたのか「ゆ゛っぐり゛や゛め゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛」と娘霊夢達が泣きじゃくる。しかしゆっくりアリスは小刻みに身体を動かし交尾をやめる様子は全く無い。 何度交尾があったかわからなくなった頃、もう母体が限界に近いので、ゆっくりアリスを巣から引っ張り出す。 ようやく解放され、巣には平穏が戻った。 残されたのは「ゆ・・・ゆ・・・」とうつろな目で体中から大量の茎を伸ばすお母さん霊夢。 そして、ただただ泣く事しか出来ない娘達である。 やがて生まれてくる大量のゆっくり霊夢の赤ちゃん、その数は50匹を越えている。 ゆっくりアリスの襲来という酷いことがあったにせよ、家族がいっぱい増えて「みんなでゆっくりしようね!!!」「家族が増えてたのしいね!」と赤ちゃんや娘はおおはしゃぎしている。 お母さん霊夢も回復し「みんなゆっくりしていってね!!!」と満面の笑みである。 だが問題が発生する、巣が狭すぎるのだ。 生まれたばかりの赤ちゃん霊夢は小さいにせよ数が多い、元々は家族がゆっくりできたであろう広い巣も今では学校の教室くらいの人口密度になっている。 しかし巣の広さはまだ何とかなる方であった。 食糧の問題は更に深刻であった、赤ちゃん霊夢は食欲旺盛で「おなかすいたよ!」「ごはんがたべたいよ!」と大合唱。 お母さん霊夢とお姉さん霊夢が必死になって虫や木の実などを集めてきても「まだたりないよ!」「おなかすいたよ!」と焼け石に水状態である。 しかし、どんなにお母さん霊夢達が頑張っても集められる食料の量には限界があり、一部の赤ちゃんゆっくり達は食べ物が手に入らず「ゆ…ゆ…」とうめき声を上げることしかできずに衰弱していった。 更に赤ちゃんゆっくり達は成長スピードが早く、1週間も経つ頃には生まれたときの3倍以上の大きさになり、巣はラッシュ時の駅構内のような大混雑になっていた。 しかし、満足に餌が食べられなかった赤ちゃんゆっくりは身体も小さくもう巣の隅の方でぐったりしているだけになっていた。 そこで起こるのが体の大きな赤ちゃんゆっくりによる共食いである、生まれてからずっと空腹状態の赤ちゃんゆっくりにとって弱ったゆっくりは最早餌にしか見えていなかった。 お母さん霊夢達が巣の外へ餌を探しに出ているタイミングを見計らい、弱ったゆっくり達の元へ集まる赤ちゃんゆっくり達。 「ゆっくり食べられてね!」この言葉が引き金となり共食いが始まった。 「ゆっくりやめてね!ゆっくりやめてね!」必死に命乞いをするがそんなものが聞き入れられるはずも無く、捕食されていく弱ったゆっくり。 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛」 「うっめ、メッチャうめ!」 「ゆ゛っ゛ぐ゛り゛じだがっ゛だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 「うまうまー」 巣に帰ってきたお母さん霊夢が見たのは以前より少しだけ広くなった巣、床や壁に飛び散った大量の餡子、そして数が減った赤ちゃんゆっくり達であった。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」 お母さん霊夢の慟哭がこだまする。お姉さん霊夢達も何が起きたのかを理解したのか涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして震えている。 「どお゛じでぞん゛な゛ごどずる゛の゛?」 「み゛ん゛な゛でゆ゛っ゛ぐり゛じよ゛う゛っ゛でい゛っ゛だの゛に゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛」 お母さん霊夢の叫びが赤ちゃん霊夢達に向けられる、そして赤ちゃん霊夢達は自分たちが取り返しがつかないことをしてしまったと気づいた。 「お゛があ゛ざん゛ごめ゛ん゛な゛ざい゛い゛い゛い゛い゛」 「み゛ん゛な゛ごめ゛ん゛な゛ざ゛い゛」 涙を流しながら謝罪の言葉を口にする赤ちゃん霊夢達、巣ではゆっくり霊夢達の鳴き声が一晩中続いた。 3日後 あの惨劇を乗り越え、ゆっくり霊夢の家族はより一層強い結びつきとなり、巣は家族がゆっくりできる環境になっていた。 赤ちゃんゆっくりの数が減り、残ったゆっくり達も満足な量ではないが皆で分け合い、生きていくのに必要な量の餌は確保できるようになっていた。 「今日もみんなゆっくりしようね!!!」 お母さん霊夢の声がゆっくりの巣に響く。 今回はお母さん霊夢のおかげで共食いがあったにせよ巣は平和になった。 第2段階として明日にでも再び発情したゆっくりアリスを巣に放り込み、限界ぎりぎりまで繁殖をさせる予定である。 更にゆっくりの数が増え、今回共食いをした赤ちゃんゆっくりはどういった行動を取るのか、ゆっくりの知能ではどうなるかは想像に難しくない。 しかしお母さん霊夢が居る限り巣の平穏は保たれるであろう。 最終的にはゆっくりアリスに最後まで繁殖をさせ、お母さん霊夢を朽ち果てさせる計画である。お母さん霊夢が居なくなった後、大量の赤ちゃんゆっくり達がどうなるか大変興味深い。 選択肢 投票 しあわせー! (12) それなりー (6) つぎにきたいするよ! (24) 名前 コメント すべてのコメントを見る お母さん霊夢が死んで赤ちゃんがこんおあたどうなるか -- (陽太) 2017-09-23 17 25 48
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※ゆっくりいじめSSですが虐待成分極薄です、描写がほぼ無い;; ゆっくりではなく人間がメインだったりします。それでもよろしければお読みください。 染物 数年前、ここ幻想郷にゆっくりなるしゃべる饅頭のようなものが現れた。 動物か植物か、あるいは生物かすら怪しいそんな奇妙な存在。 人間はそんな彼女達を最初は疑問に、あるいは恐怖に感じていたが今ではそんなこともなくなってしまった。 あるものは農業や日々の作業を手伝い、人間と友好的な関係を築いた。 あるものは人間の家や田畑を襲撃し、そのため人間に駆逐されるような敵対関係を築いた。 あるものは食料や労働力を目的とし捕獲され、一方的な搾取を行われる支配関係を築いた。 その形は様々であるがゆっくり達は人間社会に浸透してゆき、その結果人々の生活は概ね豊かになっていった。 これは、そんな彼らと正面から向き合うある真摯な1人の男の物語である・・・ 「実録、ゆっくりにみる! ~ある伝統工芸者の挑戦~」 第2回 染物職人 染物職人の朝は早い。 日の出よりも早く床を発ち、黎明の空気を体全体で浴びる男が一人。 彼は「尾二山 猛」(ひじやま たける)さん、62歳。 彼の職業は染物職人、様々な繊維や生地に色を吹き込むことを生業にしている。 「まずは朝の空気を吸う、これが基本やな。これでその日の温度や湿度なんかを感じるんよ。」 温度計や湿度計、そんなもんよりワシの方が正確だ。 尾二山さんはそう言うと、いたずら小僧のようにニヤリと笑った。 染物と言うのは様々な素材から色素を抽出し、それで布や糸を染める技法である。 方法は様々で、単純に色を移すだけのものから、着物に一枚の名画を描きあげるまで用途は広い。 あらゆる染料、染色法を組み合わせることにより様々な効果を生み出すのだ。 そしてこの尾二山さん、ゆっくりを原料に使うという変わり染めを行っているのだ。 「ゆっくり染めは『二の三』て言うてな、染料を取る『部位』と染色の『目的』が3つずつあるんよ。」 二の三、どうやらそれがゆっくり染めの基礎らしい。 「まずは部位の三な。1つめはゆっくりの飾り、2つめが髪、3つめが餡。ここでの餡てのは餡子だけでなく中身全般を指すからな。 ほんで次が目的の三。1つめは装飾、2つめが忌避、3つめが誘引だわな。主にこれらの組み合わせで作るんよ。 まぁ聞くより見たほうが解りよいだろ。ほな作るん見に行こか。」 私達は工房へと向かった。 「まず染色液から見よか。これはまずゆっくりから飾りと髪を取るんや。」 そこでは多種多様なゆっくり達が次々とハゲ饅頭にされていた。次々と生み出されるハゲ饅頭の恨み言でなんとも賑やかだ。 「こん時、ハゲ散らかしたゆっくりを種別ごとに分けんと解らなくなるから注意な。ほんで饅頭は使う直前まで生かしとく。 これはストレスを溜めたほうがええ色が出るからな。必要だったら痛めつけることもある。」 なるほど、同じ材料でも扱い次第で出来上がりが違ってくるらしい。そこを見極めるのも職人の技と言ったところか。 「ほないっちょこ作りましょか。今回は紫色の染料をつくろうか。まずぱちゅりーの髪を5、ゆゆこの髪を2いれるな。 次にゆかりんの帽子を3、そして最後にまりさの餡を1いれると。少し黒を入れることで全体が引き締まるんな。 まりさ種は腹黒いから深みのあるええ色が出るんよ。」(※単位は匹です) そして禿げたまりさをおもむろに掴むと、「今回は深みを出そうか」そういって両目を抉りはじめた。 「ゆっがあああぁぁぁぁぁぁぁああっぁぁぁぁあぁ!!!??」 一気に抉らずじっくりくり抜いていく、その間もまりさは声をあげ苦痛を訴えている。 「で、たっぷり時間をかけて絞っていくと。」 「おぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ!!!!!」 目玉をくり抜き終えると、尾二山さんはまりさを揉みしごきはじめた。指先が食い込む度に空洞となった目から餡が飛び出す。 このようにほぐしながら取り出すのがコツなのだそうだ。その後まりさは30分ゆっくりし、ようやく死ぬことができた。 そしてそれらを煮込むこと十数分、釜の中には固形物は見えなくなっていた。 「元が饅頭やからね、溶けるのも早いんよ。で、これを濾して完成と。」 そうして出来上がった液体は赤黒く、まるで血の様な色をしていた。 あまりに想像していたものと掛離れていたことから呆気に取られていると 「まぁ見とれって・・・・・ほれ。」 尾二山さんが木綿切れをさっと通すと、それは透き通った美しい紫に染まっていた。 「染料は見た目が濃いになるからな、こうするとよう解るやろ。」 なるほど、実際に染めてみて初めてその美しさが見えてくるわけか。 そのように私たちが感心していると 「なぁ、ちっとこれの匂い嗅いでみ?」 そういって切れを渡してきた。どういうことかと嗅いでみると 「「!!!!!」」 「どや、なかなかええ香りするやろ。」 なんとも爽やかな紫蘇の香りが鼻腔をくすぐったのだ。よくよく嗅ぐとほんのりとした甘さも含まれており、それにより紫蘇本来の鋭さが より生かされていることがわかる。尾二山さん曰く、まりぱちぇはジャスティスなのだそうだ。それくらい相性がいいのだろう。 「見た目だけでなく匂いを楽しめるんも染物のおもしろいとこやな。普通の草木染でも香りは残るんやけど、ことゆっくり染めに関しては おもしろい香りが多い。匂い自身も長持ちするしな。これを利用してふらんやれみりゃを用いることによって、ゆっくりの嫌う匂いを作 り出し、無闇に寄せ付けんようにすることも出来るんや。これは畑を囲む縄や、玄関マットだっったか?何やあのハイカラなんに使うた りするこが多いな。」 なるほど、これが目的の1の装飾と2の忌避であるわけか。すると残す3つめは? 「ああ、それは匂いが移らんように別のとこでやってます。」 そういって私達は次の部屋へと案内された。 「ゆがああああああぁぁぁぁあ!!! ごべんなざいいいいいぃぃぃ!!!」 「もう揺るじでえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「ひゃっはああぁぁぁぁぁ!! たまんねえええぇぇぇぇ!!! 毎日がお祭りじゃああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 そこには大量のゆっくりと数人の男がいた。 ゆっくり達は総じてボロボロで今にも力尽きんばかり、一方男達は文字通り有頂天、とろけんばかりのヘヴン状態である。 男達は肉体的、精神的にゆっくり達を己の手業や道具、あるいは暴言などあらゆる手練手管を用い虐め抜いていた。 「おー。皆ようやっとるのう。」 「「先生、おはようございます!!」」 尾二山さんを先生と呼ぶこの男達は一体? そう思いあぐねていると、ふと男の1人が語りはじめた。 「こんにちは、記者さんですね?私達はここで誘引用染料を仕込んでいます虐待お兄さんです。」 仕込み・・・?どうにもあの光景が染物へと繋がらない。そこで尾二山さんが口を開いた。 「今から誘引用の染物についての説明するんで、それ聞いてもらったらこの作業の意味がようわかると思います。 まず誘引やけど、これは虫なんかに見られるメスがオスを呼ぶためのホルモンやとか、あるいは光に集まる性質なんかが有名やね。 そんで、ゆっくりにおける最も強力な誘引作用を持つものは容姿の良い美ゆっくりでも、おいしい食べ物でもないんよ。 その正体ってのは死んだ仲間の飾りなんやね。それもうんと苦しんで死んだ、恨み辛みの詰まったものほど強力や。 そこで、ここでは虐待お兄さん達に極限までゆっくりを痛めつけてもろて、それから染料つくっとるんですよ。」 ここまで話してお兄さん 「私達は元々イタズラにゆっくりを虐待して回ってたんですが、ある時先生に出会いましてその才能を生かさないかと声をかけていただき ましてね。それまでは虐待と言うと世間の認識も厳しいことがありまして、まともに見られたことなんてなかったんですよ。ですが先生 は私達をそんなの一切ぬきに正面から見つめて評価してくださったんですよ。」 なるほど、そんな理由があるとは露知らず何という失礼をしてしまったのか。私達は自身の行いに恥ずかしくなり精一杯詫びた。 「いえいえ、無理もないことですから。私も今は仕込みの虐待しかできませんが、いつかは先生のように一人で作品を仕上げるまでになっ て、少しでも世間に我々虐待お兄さん達が理解されるようにがんばっていきますよ!!」 そういって笑うお兄さんの目は熱く輝いていた。私達は再度謝罪し、このことを記事で世の人々に伝えることを約束した。 「ほな纏まったところで実際に染めていきましょか。まず特製の釜を火にかけるんですが、この釜からもう違うんよ。」 そう言われて見た釜は先ほどの部屋のものとは全く違うものであった。 「ぅぅ・・・ぅぅ・・・」 何と釜の正体は特大サイズのゆっくりだったのだ! 「でかいゆっくりの中身を死なん程度に抜いて、外皮を特殊なこんにゃく液で固めたもんや。漆なんかも試してみたけど意外とこんにゃく が一番しっくり来てな。この釜を使うことで込められる怨嗟がより強力なもんになるんよな。そんでここにさっき用意しといたゆっくり 達を入れて、なかなか死なんように加熱していくと。で、流石にそのうち力尽きるんで全部がそうなったらここで初めて水いれるんやな 。後はこいつを濾して完成や。これで染めた布を球状のもんに着けとくだけでおもろいようにゆっくりが集まるんや。罠なんかを使うて 一網打尽にする時や、ドスサイズのを討伐する時に矢にくくって打ち込んで混乱させたり、主に討伐に用いられるな。死んだゆっくりの 飾りをそのまま使うてもこの効果はある、けどここまで凝縮したこれの威力は半端でない。染めた物の強度に依存するから手荒く扱う ても平気やし、雨なんかにも強いしな。」 そうしてしばらく、この部屋が隔離されているのは他の布に匂いが移らんためだ、卸先は主に加工場であるなどの講義が続いた。 そして夕刻 「これで今日の仕事は終いや、長いことおつかれさんな!」 笑いながら尾二山さんは労いの言葉をかけてくれた。 「染物ってのは不思議なもんでな、材料や方法もさることながら作り手が変わってもガラッとさまを変えてまう。 自慢やないけどな、ワシのつくる染物はワシにしか作れんのよ。もちろんさっきのお兄さん達も、あいつらだけの染物持っとる。 もっともワシのがまだまだ上やけどな。まぁそれはともかく、こんなワシの作るもんでも喜んでくれる人がおるわけよ。 その人達に応えるためにも、ワシはまだまだこの仕事を続けていくんよ。ゆっくりて言うおもろい素材も謎が多いしな。 つまり、何が言いたいかって言うと何か夢中になれるもんを見つけて欲しいんよ。もちろん染物で無くてもいい。 何かに夢中になれる、ひた向きになれるってのは幸せなことやからな。そんで、もし染物に興味がわいたなら内に来たらええ。 いつでも誰でも歓迎したるからな。それだけや、長々臭いこと言うてすまんのぉ。」 そう言葉を紡ぐ尾二山さん照れた様子ながらも、その瞳はどこまでも真っ直ぐであった。 最後に私達は握手を交わした。尾二山さんの手は燃えるように熱く、そして力強かった。 今日も一人、己とまっすぐに向き合う男が釜へと向かう。 自身の情熱のため、そしてそんな彼を慕うもの達のために尾二山さんは挑戦し続ける。 染物職人の朝は早い。 終われ 作者・ムクドリ( ゚д゚ )の人 今までに書いちゃったの ゆっくりディグダグ ゆっくりディグダグⅡ みかん キャベツ 和三盆 みかん修正版(温州蜜柑) 水虫 水虫(治療編) このSSに感想を付ける
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ゆっくり転生(前) 時代は現代の日本で数年前にゆっくりが発生したという設定です。 初投稿にて至らない点も多いかと思いますがどうかご容赦ください。 ---------------------- ある日俺はネットで面白いサイトを見つけた。 そのサイトによるともうすぐゆっくり達の異常発生により世界が滅ぶらしい。 滅亡後の世界で生き残るためにはゆっくり達と契約し使役するしかない、と。 そしてそのサイトではゆっくりと対話し仲ゆっくり(仲間のゆっくり版らしい?) にするための”ゆっくり召喚プログラム”がアップロードされていた。 トンデモな話だが最近やったゲームに似てて面白そうなので試すことにした。 それからしばらくして俺は学校の裏山に到着した。 ゆっくり達は基本的に街中には下りてこないので山の中のほうが見つけやすい (当初街中にも出没していたが殺されまくって人前に出なくなった) 裏山に来てから10分くらい経った頃、2匹のゆっくりを発見した。れいむ種とまりさ種1匹づつだ。 俺は早速ゆっくり召喚プログラムの『翻訳』機能で会話して見ることにした。 一般的に人の話を聞かないと言われるゆっくり達だが 実は同じ台詞でも微妙な発音の強弱により同じ発言でも意味が異なってくるらしい。 そのため一見会話が通じているようで通じていないためゆっくりは話を聞かないと思われているのだそうだ。 「「ゆっくりしていってね!」」 ゆっくり達がお決まりの台詞を喋る。一見ただの挨拶だが召喚プログラムは適切に翻訳をしてくれた。 (以下『』内は翻訳した内容) 『その姿…キサマ人間か?』 『何をしに来たのか知らないけど私たちは争う気は無いわ』 なんと、”ゆっくりしていってね!”の一言にこんな意味が含まれていたとは! 俺は感動で踊りたくなる気持ちをこらえこいつらを仲ゆっくりにするべく交渉して見ることにした。 「俺もお前たちに危害を加えるつもりは無い、ただ仲ゆっくりになって欲しいだけなんだ」 俺の言葉をプログラムが翻訳する 『ゆっくりしていこうね!』 …今の台詞をどう翻訳したらこうなるのか。本当にこれで通じるのか? 二人はひそひそと話し合っていたようだがやがて俺に答える 「おにーさんかわいいれいむ達にたべものよこしてね!」 『ワシらに協力して欲しいのなら貢物をよこせ!まずは食べ物じゃ!』 …この辺は翻訳する必要ない気がするな。だが見返りを求めてくるのは想定の内。 交渉用にもってきたお菓子をゆっくりたちに渡す。 「むしゃむしゃ…うめ!これめっちゃうめ!」 『これはなかなかいけるのう…だがこれだけでは足りん!もっとよこせ!』 俺はゆっくり達の望むままに食べ物を与え続けた。だがゆっくり達は欲深く際限なく食べ物を要求する。 やがて2匹は俺の持ってきたすべてのお菓子を平らげてしまった。 …このお菓子で10匹くらいは仲ゆっくりにする予定だったのに。 「おにーさん早く新しい食べ物もってきてね!」 『もう食べるものは無いのか?はやく新しい食べ物をもってこい!』 これだけ大量のお菓子を食べておきながらさらに食べ物を要求するゆっくり達。まさかこいつらDARK SIDEなんじゃ… 餌による交渉は無理と判断し武力によって仲間に引き入れることにする。 俺は懐からエアガンを取り出しゆっくりに銃口を向ける。 「ゆゆ?おにーさんなにしてるの?」 『なんじゃ?話がしたいのなら銃をおろすのが礼儀じゃぞ?』 俺は無言でゆっくり達の足元に銃をなんどもぶっぱなす。 「あびゃびゃびゃびゃびゃ!やめてね!痛いののやめてね!」 『ワオーン!ヤメテクレヤメテクレ!』 「ごべん゛な゛ざい゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!ま゛り゛ざだぢがわ゛る゛がっ゛だでずぅ゛ぅ゛ぅ゛!」 『貴様に従う…だから現世から消さないでくれ…!』 どうやらゆっくり達を仲ゆっくりにするためには友好的に接するより威圧的に接したほうが良いらしい やはり自分より低LVの奴を仲間にするには力でねじ伏せるに限る。 その後もであったゆっくり達に威圧的に接することにより計10匹のゆっくりを仲ゆっくりにすることに成功した。 仲ゆっくりにする時力づくだったためかゆっくりたちは皆傷ついていた。 最初に交渉したゆっくり達は足に当たる部分が擦り切れ焦げていたし、他にも目を潰されたもの(俺に) 髪の毛をむしられたもの(俺に)、全身打撲で息をするのがやっとのものだ(俺が殴ったから) だが生きてさえすればいい、俺の本当の目的はゆっくりを仲ゆっくりにすることではなかったのだ。 俺は仲ゆっくり達を連れて例のサイトに紹介されていた”永遠の館”へと向かった。 ゆっくり転生(中) ”永遠の館”はテナントビルの3Fにあった。 周りを見渡すと俺と同じゆっくり召喚士が沢山いる。 一見普通の青年やいかにも虐待お兄さん風など風貌は様々だったが 皆奇妙な形のゆっくりを連れていた。頭に角を生やしたもの、皮膚が岩のように硬いも…etc。 俺はこれらのゆっくりがゆっくり合体で作られたものだと気づいた。 「”永遠の館”へようこそ。あなたもゆっくり合体をしにきたのね」 店員が俺に話しかける。てっきりサンタのように髭を蓄えたおじいさんかと思ったが 店員は若くてきれいな女性だった。 「あ、はい…ここに来るのははじめてなんですけどいいですか?」 「もちろんよ、最初に他の人が合体させるのを見るといいわ」 彼女が指差す方を見るとちょうど虐待お兄さん風の男がゆっくり合体を行い始めたところだった。 巨大な二つのビーカーのようなものにゆっくりと別の生き物をそれぞれ入れている。 「やめさない、とかいはのわたしはこんなせまいところはにあわないんだわ!」 お兄さんはゆっくりありすとゴキブリを合体させていた。 てっきりゆっくり同士を合体させるものだと思っていたが違うらしい。一体どんな生き物が誕生するんだろう… 合体装置がビカビカと光り、ゴロゴロと音が鳴る。 「い゛ぎや゛あ゛あ゛あ゛あ゛!あ゛り゛ずの゛か゛ら゛だ゛が゛あ゛あ゛あ゛!」 『ワレハ ヨウチュウ ゴキアリス コンゴトモヨロシク…』 装置が動きを止めた後出てきたのはソフトボール並みの大きさのゴキブリだった。 普通のゴキブリと違うのは大きさだけでなく腹にゆっくりありすの顔がついている。 ぶっちゃけかなりキモい。子供が見たら絶対トラウマになるだろう。 「ごん゛な゛がら゛だは゛い゛や゛あ゛あ゛あ゛!も゛どの゛がら゛だに゛も゛どじでえ゛え゛え゛え゛!」 『強靭ナ体ヲ手ニ入レルコトガデキテアリスウレシイ』 召喚プログラムはありすの言葉を翻訳する。いや絶対そんなこと喋ってないだろ… 「ごん゛な゛どごででい゛っ゛でや゛る゛う゛う゛う゛!」 ゴキアリスの様子を見ていたが大きくなって耐久力が増した分、体が重くなって動きが遅くなっているようである。 虐待お兄さんから逃げようと無様に足を動かすが亀のように歩みが遅く簡単に捕獲されてしまう。 虐待お兄さんは素手でそのゴキをつかむとあっさりと壁に叩きつける。 「い゛ぎゃ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!い゛だい゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!」 それを見て虐待お兄さんは微笑む 「よし、これでひどめに虐待しても死ななくなったな。これからは今まで以上にしっかりと虐待してあげるよ」 虐待お兄さんはゴキを持ってきた虫かごに入れるとスキップしそうな勢いで帰っていった。 「次は僕の番だね」 虐待お兄さんが帰った後温和そうなお兄さんが現れた。仮にゆっくり愛でお兄さんとしよう。 愛でお兄さんはゆっくりれいむと花を装置に入れ合体させる。 すると花のようにきらびらかなれいむが現れた。 「ゆっ!みてみて!れいむすっごくきれいになったよ!」 「よかったねれいむ」 愛でお兄さんもれいむも嬉しそうにしている。 だがれいむは愛でお兄さんに近づこうとしてあることに気づく 「ゆっ?れいむうごけないよ」 れいむの下腹部は植物のように根をはっており鉢植えのなかから抜け出せないようになっている 「なにこれ!?おにーさん、れいむをたすけてね!」 愛でお兄さんは相変わらずれいむに微笑みながら言った 「心配しなくてもいいよれいむ。ちゃんと毎日僕が餌をあげるからね。動けなくても困ることは無いよ」 い゛や゛あ゛あ゛あ゛!れ゛い゛む゛う゛ごげな゛い゛の゛ばい゛や゛あ゛…フふぇ、ヴェクジョン!」 急にれいむはくしゃみをしだした。どうやらこのれいむ花粉症らしく自分の体からでる花粉でくしゃみが出るらしい。 愛でお兄さんは微笑んだままれいむを透明なケースに入れる。そのケースは防音らしくれいむの泣き声もくしゃみの音も聞こえない。 「きれいだよれいむ」 愛でお兄さんは満足した表情のまま帰っていった。 さて次はいよいよ俺の番だ。ゆっくりと何を合体させるか…俺は仲ゆっくりにしたゆっくりを眺めながら考えた。 ゆっくり転生(後) 俺はふと疑問に思ったことを店員のお姉さんに聞いて見た。 「もしゆっくり同士を合体させたらどうなるんですか?」 「わかりやすくいえばゴ○ンクスみたいになるのよ。うまくいけばお互いの長所を受け継いだゆっくりになるけど 運が悪いとお互いの短所を持ったゆっくりになるわ。だから最近はだれもゆっくり同士を合体させないの」 ”レアゆっくりを作る”という俺の野望はあっさりと打ち砕かれた。しかしお姉さんの口からゴテ○クスという単語が出るとは… 「あ、でも例外的に同じ種類のゆっくりを10匹合体させるとキングゆっくりになるわよ。手軽に強化できる反面 体が大きくなる分食費も10倍になるというデメリットもあるけどね」 今度はド○クエかよ…てっきり○神転生かと思っていたのに鳥○明恐るべし。 その時唐突に今履いている靴下に穴が開いていることに気がついた。よし、これとゆっくりを合体させて見よう。 俺は靴下とゆっくりを合体させて見た。するとゆっくりの顔が印刷された靴下ができあがる。しかも開いていた穴はみごとに塞がっていた。 おそるおそるその靴下を履いて見ると女性の肌のようにすべすべとし見事に俺の肌にフィットする。思ったより履き心地は良いようだ。 「むぎゅ~くさいよ~」 俺は靴下の声を無視してそのまま靴を履いた。顔の部分を足で潰され靴下は喋れなくなる。 今度持っている靴下を全部これに変えてみよう。 「ゆっくりと道具の合体か。なかなかいいアイデアだね」 いつの間にか先ほどの虐待お兄さんが背後にいた。いつのまに…!というかさっき帰ったんじゃなかったのか? 「試しにこれとゆっくりを合体させて見るよ」 虐待お兄さんはどこからか日本刀を出した。明らかに銃刀法に触れる長さだ。 本日何度目か知らないが合体装置はゴロゴロと音を鳴らしながらゆっくりと刀を合成している。 その時俺はまたあることを思いついた。 「こういうのはどうでしょうか?」 俺は合体装置の中でどろどろと溶け始めているゆっくりをライターで燃やして見た。 「ゆっ?なんだか熱いよ!ゆっくりはやくやめてね!」 合体装置は刀と燃えたままのゆっくりを合体させた。 「ほほうこれは面白いですね」 出来上がったのは刀身が燃え盛っている刀だった。どうやら燃えているゆっくりと刀を合成させることにより火属性の武器を作ることに成功したらしい。 「あ゛づい゛い゛い゛い゛!ばや゛ぐびを゛げじでえ゛え゛え゛え゛!」 よく見ると柄の部分がゆっくりの顔になっていた。刀身が燃えているためゆっくりは常に炎にさらされていることになる。 だがゆっくりは県の一部となっているため逃げることも焼け死ぬこともできず永遠に炎に焼かれ続けるのだ。 「これはいい武器ができた」 虐待お兄さんはクックと笑いながら今度こそ帰っていった。 虐待お兄さんの登場で気がそがれたが最後にキングゆっくりを作ることにした。 キングゆっくり作成にはゆっくり10匹が必要らしいが俺が持っているのは種族ばらばらのゆっくり9匹。 まあ何とかなるだろう。ゆっくりを合体装置に入れて…スイッチON! 「バモアgvbヲkガpァウェア、バp!!!」 突然合体装置が振動し煙を吐いたかと思うと中からどろどろにとけたゆっくりがでてきた。 スライムのようにぐちょぐちょでヘドロのようなにおいがするがなんとか生きているようだ。 「ごめんなさい、合体事故が起きちゃったみたい…」 まだ合体装置は不完全のようで低確率で失敗が起こるらしい。 俺はとりあえず失敗ゆっくりを連れてビルを出たがあまりの臭さに途中でドブ川に捨てていった。 失敗ゆっくりはゆっくりと川を流れていってやがて見えなくなった。 -終わり- このSSに感想を付ける
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抜けるような秋晴れの朝だった。 人里の外れにある、広めの平地。遮蔽物の少ない野原。 そこに突如湧きあがるゆっくりの大群。それらの目はおそろしく真剣で。 「「「うらー!!!」」」 まさしく兵士のそれであった。 ススメススメ、目指すは豊の大地。恵みに満ちた新しい領土。 荒れ果て(ゆっくり達が食い荒らしたから)、恵みに乏しく(ゆっくり達が(ry、冷たい風が吹き荒れる(ゆっくり達が木の根っこまで食い荒らしたから) 死んだ大地(下手人、ゆっくり達)を捨てて、豊穣の大地はもう目の前だ。 「ゆっくりすすめ!」 団体を指揮するのは1体のゆっくりまりさ。それの指揮に従ってゆっくり達は新天地を目指す。 あともう少しというところまで来た。ゆっくりれいむは傍らのゆっくりまりさにウキウキと話しかける。 「もうちょっとでゆっくりできるね!」 しかし、すぐ隣にいるはずのまりさからの返事はない。あれ、と思って振り返ると、まりさが尻餅(?)をついているのが見えた。 バカだなあ、と呆れつつまりさの所まで戻るが、どうも様子がおかしい。 ゆっくりまりさの表情が動かない。デフォルトの半笑いの状態でひっくり返っている。 よく見ると顔の中心にポツリと穴が開いている。そして、顔の反対側には大穴があいており、そこからはアンコがジクジクと漏れていた。 これは……弾がまりさを殺した! 「てきしゅー!」 途端に群れ全体に緊張が走る。ピョコピョコ気楽に跳ねていたゆっくり達は姿勢を低くし(ほぼ球体のゆっくりではあるが)、 匍匐前進に切り替える(ほぼ(ry。 耳を澄ませば、自分のすぐ横を風切り音を立てて弾が飛んでいるのがわかる。なんてこった、誘い込まれたか。 時折運の悪いゆっくりが弾に当たってアンコを飛び散らせながら絶命するが、群れ全体としては目標にわずかずつではあるが近づきつつあった。 そんな中、数体で固まって動いていたゆっくりの集団が宙に舞った。地雷を踏んだか。 まず1体のゆっくりれいむが悲鳴を上げる間もなく絶命する。 じめんにたたき付けられた残りのゆっくり達の中にも無事なゆっくりはいない。 「め゛があ゛い゛た゛い゛よ゛ーぉぉぉぉっぉお゛」 爆発で目を潰されたゆっくりがパニックを起こし、傍らのゆっくりを突き飛ばす。 直後にその目が潰れたゆっくりは蜂の巣にされた。 「ぎゃ」 まず1発。ゆっくりの動きが止まる。 「や゛め゛て゛え゛え」 2発、3発。弾が来た方向の反対側に逃げようとする。 潰れた目からアンコをこぼしながら、地面を必死に這う。 「あ……ああん」 4発目で力尽き、後は饅頭の解体作業に移行した。 時折うめき声を上げるが、1発当たるごとに原型は失われ、10発あたる頃には肉の壁にも使えない代物が出来上がった。 一方、突き飛ばされたゆっくりは体の左半分が失われており、既に意識はない。 転がっていった先で別のゆっくりと睨めっこ。デスマスクVSゆっくりれいむ。 「ひゃああああああああああ!!!」 恐慌に陥ったれいむが逃げ出す。 だが、指揮官のゆっくりまりさが行く手を遮る。 「ゆー!ゆー! どいてよ!」 「ゆっくりしね!!!」 どんという音とともに逃げようとしたゆっくりれいむが粉々になる。 ゆっくりまりさ必殺の尻アタックである。れいむの破片が、行進中の(先発隊が匍匐前進に切り替えているのに)ゆっくり達に飛び散る。 ピタリと動きを止めるゆっくり達。指揮官まりさは当然不平を漏らす。 「はいぼくしゅぎしゃはしゅくせいだー! はやくすすめ! ゆっくりしね!」 お前意味分かってるんか? だが、動きを止めたゆっくり達は声に応じない。 全てうつむいたまま何やらぶつぶつとつぶやいている。 「「なんで…」」 「ゆ?」 「「な゛ん゛で゛こ゛ん゛な゛こ゛と゛す゛る゛のおおおお゛おおおおおおおお!!!!」」 一生懸命新しいすみかを手に入れようと、ゆっくり頑張っていたのに、なんで仲間を殺すんだ。 なんで、なんでなんで。壊れた機械みたいに繰り返すゆっくり達が、指揮官まりさにかじりつく。 「いたいよー! やめギョ」 顎が食いちぎられた。さらに1体のゆっくりれいむが指揮官まりさにのしかかる。 ブルブルと痙攣を始めるれいむ。交尾の始まりだ。 なんでと叫ぶのは、今度は指揮官まりさの番だ。なんだってこんな時に。 「りゃめ゛てどおおお! なんでこんなごどずるのほおおおお!!!」 うまくしゃべれない口で必死に叫ぶ指揮官まりさ。だが、交尾は止まらない。 「らめえええ! こしがとまらないおおおおお!!!」 れいむは既に、まりさを襲った理由など頭にないようだ。発情した赤くてトロンとした表情のまま、ピストン運動を続ける。 共食いに遭いながら強姦される指揮官まりさは白目をむき、口から泡を吹きながられいむの動きに合わせて揺れる。 「あ、あああ、あああん!! いっちゃビシャッ! 交尾が最高潮に達し、れいむが果てるその瞬間、れいむの後頭部に弾が命中する。 弾は脳天をかすめるように当たり、ゆっくりれいむの時間は絶頂の瞬間で停止する。 悶絶する指揮官まりさの上で硬直する、恍惚の表情のれいむの死体。 時を同じくして、落ち着きを取り戻した他のゆっくり達が指揮官まりさから伸び始めた茎に気づく。 「あかちゃん?」 「あかちゃんだ! ゆっくりできるよ!!!」 見る間に大きくなる、茎の赤ちゃんゆっくり。それらが目を開く。 「ゆ?」 「おめめをひらいたよ! こんにちは! あかちゃん!」 ちなみに2体の死体はそのままである。 ついさっきまでの惨状の名残を囲んで、喜びに沸くゆっくり達。 「ままー?」 「ままたちだよ! はやくゆっくりしようね!!!」 砲撃、着弾。 その頃、最前線の集団は敵が掘った塹壕にたどり着いていた。 命拾いした、とばかりに塹壕に飛び込んでいく。飛び込んだ勢いで潰れるゆっくり、少数発生。 ふーふーと呼吸を整えるのは1対のゆっくりまりさとゆっくりアリス。 「けがはない? まりさ」 「だいじょうぶだよ! げんきだよ!」 よかったー、とアリス。そんなアリスにまりさが少々照れた様子で声を掛ける。 「このたたかいがおわったら、アリスとかぞくをつくりたいんだ!」 「ほんとう!? ……べ、べつにうれしくなんかないんだからね!!!」 直後に砲弾が直撃。山なりに飛んできたものがアリスを粉々にする。 巻き上げられた土と一緒にまりさに降る、アリスの残骸。 一瞬呆然としたまりさが、憤然と塹壕を飛び出す。 「よくもアリスを!!!」 だが、塹壕を出かかった所で塹壕に引き戻される。 まりさを引き戻したのは、アリスと仲が良かったゆっくり上海と蓬莱。 「ゆー! なにするの!」 「ホライホーライ!」「シャンハーイ!」 まりさを怒鳴りつける2体の様子を、まりさはこう解釈する。 「おちつかないとあぶないもんね! ありがとう!」 だが、上海と蓬莱が振り上げたのは、ギラリと鋭く光るカミソリ。 ……の、刃を持つ安全カミソリ。 「ホーラーイ! (よくもアリスにいらない死亡フラグを立てたな!)」 「シャーンハーイ! (生かしておくべきか、この泥棒猫!)」 上海と蓬莱がまりさをカミソリで殴り始める。 2体は小柄な種であるため、殴られても大して痛くはないのだが、時々カミソリの刃がまりさの皮を削いでいく。 「なんでこんなことするの! ゆっくりできないよ!!」 それでもさほどダメージはないので、まりさは冷静さを失わないでいられた。 冷静に抗議を続けたことがそのまりさの命を奪う。さっさと体格に任せて上海と蓬莱を黙らせれば良かったのだ。 よく開くまりさの口に安全カミソリの頭が突っ込まれる。 「ふぐ!?」 そして掲げられるまりさ。魔女を断罪する十字架のように、カミソリは天高く持ち上げられる。 まりさは磔にされた罪人であると同時に、動かない的であった。 敵陣まで大分近づいていたため、弾の命中率は大分高い。 容赦なくまりさを殺していく弾。 口がふさがっているまりさは「なんで」と目で問いかけるだけ。涙と涎で上海と蓬莱を濡らしながら絶命した。 「シャンハーイ」 満足げにため息を吐いた2体のゆっくりは、何気なく、まったく不用心に塹壕を飛び出す。 当然、10秒と持たずにバラバラになる。だが2体は穏やかな表情で逝った。あの世で大好きなアリスとゆっくりできる、とでもいいたげに。 だが残されたゆっくり達はそんなこと知ったことではない。3体も無駄に死んだ、このままでは自分達もゆっくりできなくなる。 ではどうしよう。本人達が気づかない間にだいぶ混乱していたゆっくり達は、各々勝手にゆっくりし始める。 眠り始める個体。眠ってる個体に交尾を試みる個体。その個体を食べ始める個体。無意味に飛び跳ねて蜂の巣になる個体。 塹壕に時折飛び込んでくる砲弾で吹き飛ぶ仲間達には目もくれない。 硬直する戦況を打開すべく、最後方にゆっくりパチュリー達とそれらが作った武器がお目見えする。 でかいパチンコである。玉入れの方ではない、スリングショットの方だ。 装填された弾はゆっくりみょん。頭に槍のつもりだろうか、木の枝をくくりつけている。 これなら敵陣に直接攻撃が可能である。 「おおおおおちつこうよ、やめてー」 やめてくれと懇願するみょん。だがパチェの耳には届かない。彼女(?)の灰色の白あんがはじき出す答えはただ一つ。 ゆっくりみょんは半分霊体だから軽い。遠くまで届きそうだ。 みょーんと発射される第一波。だが、ゴムの引きが甘く、発射されたみょんは眼前のパチェに突き刺さる。 「むきゅーん」 「ちちちっちんっぽー!」 スコンと気の抜ける音を立てて枝がパチェに突き刺さり、急所に当たった訳でもないのに昇天するパチェ。 やっちまったと震えるみょん。そのみょんを他のゆっくり達がもう一度パチンコに装填する。 同じ失敗を何度か繰り返した後、ようやく最前線にみょんが飛来する。 そう、最前線に。最前線の塹壕の中に。 塹壕の中でゆっくり子育てを始めていたゆっくりは串刺しになり、弾に使われたみょんはえらいことになったと泣き出す。 「むきゅむきゅーん、こうりょくしゃかくにん、つづけー! ゲッホゴッホ!」 興奮のしすぎで発作を起こしたパチェが吐血ならぬ吐餡をして気絶する。 次から次へと塹壕に飛来するみょん。終いには衝撃で塹壕の壁が崩れ始める。 「ゆー!? ゆー!?」 「わからないよね! ゆっくりしたいよね!」 「おか゛あ゛ああさ゛ああ゛んん゛……」 生き埋めになるゆっくり達。 どうも様子がおかしいと後方が気づいたのは、みょんを全部発射した後だった。 戦局打開の第ニ策目は戦車の投入である。 ゆっくりさくやに緑色をした怪獣の着ぐるみのような装甲【ぱーふぇくとめいど】を装備させたゆっくり戦車。 主砲には0.1口径20mmナイフ砲【さつじんどーる】、さらに対ゆっくり散弾砲【えたーなるみーく】を採用した、 ゆっくりさくや-III式戦車、通称『さくやさん』である。 ノソノソと登場したさくやさんは敵弾をものともせず前進を開始する。当然、下敷きになった味方もものともしない。 自分の下で断末魔の悲鳴は聞こえるが、さくやさんは急には止まれない。 ぶちまけられた餡子が邪魔だが、さくやさんはこの程度では止まらない。 「おーるはいる、おぜうさまー!」 「「「おーるはいる、おぜうさまー!!!」」」 さらに航空戦力も投入される。 ゆっくりれみりゃの大群が、高々度からの爆撃を開始する。爆撃範囲は味方最後方から中盤にかけて。 「はやくやめグシャ 「むギュー 爆撃成功、爆撃成功。岩石投下による被害は甚大。味方勢力のさらなる減少を確認……あれ? そもそもの作戦内容を思い出せないれみりゃは、頭から?マークを生やしたまま敵陣上空に到達する。 途端に、対空散弾による迎撃が開始される。翼にダメージを負い、1体また1体と撃墜され、地面と激突するれみりゃ。 だが、運の良いれみりゃ、いち早く逃げ始めたれみりゃが他のゆっくりの上に軟着陸する。下で悲鳴が聞こえたが、気にしない。 餡子で滑って転んだれみりゃが泣き始める。 「びええええ! さ゛く゛やああぁぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛!!!」 「おぜうさま! おぜうさま!」 泣き声を聞きつけたさくやさんがノソノソと駆けつける。だが言ったはずだ、さくやさんは急には止まれない。 ぶちっ。 足の先から順に、さくやさんに挽き潰されていくれみりゃ。 「ぎゃああああああ!!! いだいよー! やめてさ゛くやあ゛あ゛あああ゛あああ!!!」 飛び散る肉餡。れみりゃは必死にさくやさんから逃げようとするが、下敷きになった胴体が邪魔で全然動けない。 手がむなしく地面を引っ掻く。 「ああ、おぜうさま! ああ、おぜうさま!」 ノソノソとミンチが出来上がっていく。胴体が潰され切る頃にはれみりゃには悲鳴を上げる余力もなく、 ただ、ぜーはーと荒い息をするしか無かった。そして、頭部も下敷きになる。 「さ……ぐ……や……ぁぁぁ」 ゴリ。 「お゛ぜう゛さ゛ま゛あ゛あああ゛ああ!!! なぜか「止まらなかった」さくやさんが慟哭を上げる。上げて、上げて、上げながら【えたーなるみーく】の散弾をばらまきj始める。 混迷極める戦局を打開する最終手段として、空挺戦車ちぇん式、通称『ちぇんしゃ』の投入が決定した。 輸送はゆっくりフラン4体で1体のちぇんしゃを運ぶ形式になる。 勿論、落下傘などない。 「わかるよねー? むちゃだよねー!?」 「「「「ゆっくりおちろ!!!」」」」 ちぇんしゃの残骸と巻き込まれたゆっくりの死体だけが量産されていく。 えらいめにあった、なんてこった。 その日ののうかりんは間違いなく厄日だった。 いつもどおり畑にきた。収穫間際の作物が野良ゆっくりに荒らされないように柵の点検をしようと思っていた。 そんなのうかりんが目にしたのは、雲霞のごとき野良ゆっくりの大群。 追い払おうと足下の土を掴んで思いっきり投げつけたが、まるで怯まない。 ちなみに、のうかりんは名称の元となった風見幽香に比類する膂力を持っていることを併記しておく。 怯まないどころか、畑の脇にある用水路の中にまで入り込まれた。 驚いて飛び出すかと思って石を投げ込んでみたが、あまり効果はなかった。 それどころか、なんか道具のようなものを持ち出したりもし始めた。 厄日って騒ぎではない。天災だ、これは。 「ああ、ゆっくりれみりゃまできたず! どうすっか!」 とりあえず土を投げてみる。おお、落とせる、落とせる。 しかしなんて数だ。休耕中の畑がゆっくりの残骸で一杯になっているではないか。 ……肥料になるかな。 上空から惨劇の様子を眺める人影2つ。 「……何がしたかったんですか? パチュリー様」 「ゆっくりの大量錬成法の実施検討と、……ゆっくりの統制可能性の検討」 「失敗、ですよね?」 「……大量錬成法の実施検討は成功。……ゆっくりがある程度道具を使えることも分かった」 「はあ、そうなんですか。ところで、その大量錬成法の名前ってあるんですか?」 「……ゆ、……。……ゆっくりコンフリクト」